──医療系ベンチャーではどのような仕事を?

そこでは経営企画部長として、主に新規事業の企画と資金調達をしていました。「MBA取得を目指しているなら、ファイナンスわかるよね」と、いきなり実戦。大変ではありましたが、デッドとエクイティ、それぞれで調達に成功しました。学びと実務が上手く噛み合ったんですね。この転職で年収は大幅にアップしました。そうしたら、当たり前ですが難しさも倍増(笑)。話す相手や内容のレベルが経営の意思決定レベルに上がったので大変でした。でも、刺激的で日々充実していましたね。入社して2年半ほど走り、みんなで立ち上げた新規事業がグロースステージに移行したタイミングで私の役目は終わったなと思ったので、辞めることにしました。

──1社目、2社目ともに辞めることや転職することに不安やためらいは?

どちらも迷う余地はなく、ためらいはありませんでした。振り返ると、2社でのキャリアは違う意味を持っていたなと感じます。1社目は、スキルがない状態からビジネスの基礎を教えてもらったフェーズ。2社目は、ビジネススクールで学んだ理論を取り入れながら、ビジネスモデルの構築・仮説検証に取り組んだ実践的な学びのフェーズでした。
また、採用にあたって「あなたの『この』経験やスキルが欲しいから来て」と具体的に示してもらい、改めて自分の強みを客観的に知ることができたので、とにかくそこを伸ばそうとした第2ステップだったんです。それは「ビジョンやイメージを具現化して、実現に導く為のサポートをすること」でした。二番手ポジションが得意なんですね。ただ、その会社の事業の可能性に期待はしてはいたものの、それは私がやりたいと思うことのど真ん中ではありませんでした。

──では、今は第3のステップですね。

そうです。2社目をやめた時に、燃え尽き症候群というか、それまで10年以上猛烈に働いてきて疲労も感じていましたので、まとまった休みをとりました。そこから、次の仕事について考え、入ったのがFFGベンチャービジネスパートナーズでした。

ど真ん中の仕事がしたかったからVCを選んだ。

──どんな経緯で、FFGベンチャービジネスパートナーズに入社することになったのでしょう。

2社目を退職後、何も考えない時間を持とうと思って、スリランカに行きました。半月くらいぼーっとしていた時に、FFGベンチャービジネスパートナーズのマネージングディレクターの山口さんからfacebookにメッセージがきたんです。山口さんとは、QBSの産学連携マネジメントの講義で面識がありました。その後、2社目の会社でも一緒にお仕事をする機会があって。急にスリランカにいるなんてなんか様子がおかしいぞ、と思ったんでしょうね(笑)。
2社目を退職したことをお伝えすると、「手伝って欲しいことがある」というお話になって、投資事業部長の長谷尾さんとともに採用面接をしてもらいました。長谷尾さんは、その場ですぐ採用の意向を固めてくれたんじゃないかな。そんな手ごたえを感じる面接でした。

──長谷尾さんとお会いして、共感できるビジョンが見えたから入社を決めたんでしょうか。

それが、全然違うんです(笑)。これは長谷尾さんに感謝なんですが、面接で「二番手ポジションが得意なんですが、これ!という自分のど真ん中の事業会社が見つからなくて」と言ったら、「じゃあVCいいよ」と言ってくださったんです。
長谷尾さんは、「佐々木さんが入りたいと思うような会社やシードをうちで探して投資して育ててください。その後そちらに移るもよし。」と。「この会社で働きながら就職活動をするという気持ちでお仕事をやってくれませんか」と言われて、だったら急いで探さなくても、ここで働きながら見つければいいなと思ったんです。
私からは、コミュニケーション能力、前々職で学んだITとヘルスケアの知識、前職やQBSで取り組んだビジネスモデル構築の経験や、統計や経営にまつわる基礎知識などを活かして貢献できるというお話をしました。これらは、VCとしてベンチャー企業を支援していくのに必要なスキルの一部だったのでマッチしたんですね。実際に仕事を始めた今、二番手ポジションが得意な私には、とにかくやりがいがあって!水が合う様です。VCのお仕事は、目利き力を活かして投資をするだけではなく、投資先の経営者のビジョンに寄り添い、影日向となくサポートすることが重要だからです。この先の転職のことは現時点では全く考えていません。キャピタリストとして一人前になるべく集中して取り組んでいます。課題意識をもって、社会や人をより豊かにする為に、ビジネスや研究に前向きに取り組む方々をご支援します。

九州の学生のアントレプレナーシップ向上を目的としたイベント「TORYUMON」の様子。出資先のF-venture社が開催し、FFGベンチャービジネスバートナーズを上げて応援している。

──具体的にはどんなお仕事を?

主に担当しているのは、九州にある大学を中心に大学発のベンチャーを新興していく仕事です。大学の中にある技術シーズを見つけて育てて、会社にして、出資していくという、息の長い仕事。おかげさまで、FFGベンチャービジネスパートナーズは、平成30年度に科学技術振興機構(JST・文部科学省管轄)大学発新産業創出プログラム(START)の事業プロモーターユニットとして採択されましたので、存分に動きまわっていこうと思っています。
もちろん純投資も行っています。投資事業部のメンバーは皆さん多様な観点をもっていて、それぞれの興味分野、得意な案件があります。私もこれまでの経験が活かせる、例えば医療分野、バイオやライフサイエンス、ITの案件に手を挙げて取り組んでいます。
考え方やプロセスが多様でも、メンバーはしっかり同じビジョンで繋がっている。そういう環境で仕事ができていることは、とてもありがたいことだと思います。