あなたはなぜ、それをするの?

──順風満帆といった感じがしますが、課題はありますか?

ベンチャー界隈の女性の少なさは気になっています。特にVC界隈って女性の比率がとても少ない。世界的に見ても6%しかないらしく、本当に女性にお会いする機会が少ないです。私自身は、性別を意識せず働いてきましたし、結婚も出産もしていないこともあり、ビジネスにおいて女性であることがリスクになることもなく、女性だからというだけの理由で苦労をした経験は多くはありません。だけれども、なんでこんなに女性が少ないのかな、私は実際にはどう見られているのかなとは思います。
もし、不確実性の高い案件に対して、お預かりした大きなお金を用いて投資するといった仕事に、女性は向いていないと思われているのだとしたら、それは払拭したい。多様性が増していく時代の中で、ベンチャーの役割がこれまでになかった価値を提供することでビジネスにしていくことなのだとすれば、本来は多様性のど真ん中にいるべきなのに、そこに女性が少ないのはどうなのかなって。

なんでも性差に紐づけるのも違うとは思いますが、極端に女性が少ない現状の背景には、大きく2つのパターンがあると感じていて。チャンスが回ってこない方っていうのは、女性だからという理由でチャレンジを受け入れてもらえないパターンと、私なんてできないと自分で手前に線を引いてしまうマインドセットのパターン。女性も、何ができるかではなくて、何をするのかという意思を個人が持って、考えられるようになればいいなと思います。
そして、企業、ひいては日本社会全体において、ワークライフバランスの柔軟性を高めることは、女性に限らず今後ますます重要性を増してくると思います。もっと柔軟に受け入れられる世の中になって欲しい。この点は日本の中で大きなNIMBY問題(※)の一つだと思っています。
組織や文化は一足飛びには変わりませんが、個々人が仕事や社会に対する主体性を持つことはできます。その大切さについて、あくまで私のケースということではありますが、折に触れて、これから社会人になる学生のみなさんに伝えていきたいと思っているんです。

※Not In My Back Yard(我が家の裏には御免)の略語で、必要性は認めるが自らのテリトリーには受け入れたくない、といった態度を指す言葉

──佐々木さん自身はどのような働き方を目指していらっしゃいますか。

私のビジネスマインドの軸は、「どこで」働くかではなく、自分が「何がしたいのか、できるのか、誰を喜ばせてどれだけお金をもらうのか」ということです。これを頭に入れて働けば、東京だろうが地方だろうが、大企業だろうがベンチャーだろうが、男性も女性も、自分が豊かになるよ、というお話を機会があれば伝えさせてもらっています。
自分の社会との関わり方、ポジションを、みんな一回整理したほうがいいと思います。私はそれを、九州大学のビジネススクールで学びました。先生がたに「あなたはそれを何故するの、何になるの、あなたがする意味はあるの」と何度も言われ、この考え方ができるようになりました。意思決定のポリシーみたいなものですね。これは大事にしていきたいと思います。

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2度の転職に、MBA取得。一見大変そうに聞こえるキャリアを積んできた佐々木さんの軸の部分には、確固たるポリシーがありました。何ができて、何が得意で、何をしたいのか。逆に何は苦手なのか。自己認識をはっきりさせた上で、働く会社について意思決定をしてきたからこその、佐々木さんのキャリアだということがインタビューを通してひしひしと伝わってきました。
就職、転職、起業。キャリアにまつわる悩みや葛藤は、挑戦しようと思う誰もにつきまとうもの。そんな時、佐々木さんのように「意思決定のポリシー」が自分の中ではっきりしていれば、新たな一歩を踏み出しやすくなるのではないでしょうか。今一度、「何がしたいのか、できるのか、誰を喜ばせてどれだけお金をもらうのか」について、それぞれが考え直してみると、より自分らしい仕事、環境を見つけられるのではないでしょうか。

株式会社FFGベンチャービジネスパートナーズ

  • 所在地:福岡市中央区天神2丁目13番1号
  • 設立:平成28年4月1日
  • 事業内容:投融資業務

取材・文:NATIV.編集部