かねてより注目されている地方への移住。ここでは東京都からの移住率No.1の鳥取県へ移住した方々にインタビューし、その働き方や暮らし方から、改めて鳥取の魅力について迫りたいと思います。

今回は昨年鳥取に移住し、ご夫婦で写真事務所を営みながら佐治町に暮らすデザイナーの黒田朋花(くろだともか)さんに会いに行ってきました!

鳥取に移住することとなったきっかけやそれまでの経緯、コロナ禍で独立し歩み始めた現在の仕事や暮らしについてお話を伺ってきましたのでご紹介していきます。

プロフィール

宮崎出身。鹿児島の大学へ進学、その後就職のため上京し東京で暮らしていました。

学生時代、桜島について学んでいたことから、就職先は防災や道路整備などに関する建設コンサル会社。現在と全く違う業界です。

転機は初任給で購入したカメラでした!
当時の同期同士で一眼レフカメラを購入し、一緒に写真を撮りに行ったりする中で、いちばんカメラにハマったのが黒田さんだったそうです。

自然豊かな宮崎で育ち、その後鹿児島へ。
山登りが好きで山の多い九州で大学卒業までの時間を過ごしたことも、のちのち風景を撮影することにつながっていったとおっしゃいます。

隼Lab.にて取材に答える黒田さん

少し遡り就職先に地元ではなく東京を選んだことについては、経験や知識を広げるために外の世界に出た方がいいと考えたこと、それとドラマなどでみるキラキラした東京に憧れもあったから。

同級生はほとんど地元に残ることもあり、ご家族にはしばらく話していなかったという就職活動。
いざ「東京に行くかもしれない」と伝えたとき、ご両親は驚きながらも黒田さんの決断に賛同してくださったといいます。

写真の道に進むため転職

コンサル会社では4年間勤め、休日はカメラを持って山に登ったり、都内の自然の中にある花の写真を撮ったり、楽しみながら写真活動を続けていました。

その後やっぱり写真の仕事がしたいと思い、コンサル会社を辞めてスタジオに転職。

スタジオでの仕事は雑誌や広告の写真、ドラマやCMの動画を撮るといった内容で、先にも書いた前職とは全く違う業界でしたが、「悩むよりは好きなことがしたい」と未知の世界に一歩踏み出した黒田さん。

そこで現在の夫であるフォトグラファーの長谷裕太郎(はせゆうたろう)さんと出会います。

移住を考えるきっかけ

スタジオの仕事をしてしばらく経った頃、新型コロナウイルス感染症の流行が始まりました。

「このまま東京にいても…」

そのときはそれが必ずしも“移住”ということではなかったようですが、これが最初のきっかけでした。

黒田さんは「コロナは将来のことを考えるいい機会だった」とおっしゃいます。

当時現在の夫である長谷さんと同棲していて、例えばこの先結婚して、もし家を建てることになったら、東京は自分の理想とはちょっと違うなぁと思われたそう。

もともと自然が好きでこのまま東京にいるよりは地方へと考えたとき、宮崎かあるいは長谷さんの故郷である鳥取かという選択肢になり、お二人は鳥取を選ばれました。

コロナ禍での東京での仕事

コロナの感染防止のために「自粛」という言葉が叫ばれていた当初、スタジオの仕事は一時休業状態でした。
密閉空間であるスタジオは敬遠され、写真を撮る機会もなくなっていきました。

そんなことも東京から離れ地方で暮らすことを考える要因になったのかなと黒田さんはおっしゃいます。

鳥取を選んだ理由

黒田さんが初めて鳥取を訪れたのはコロナ以前のある年末年始でした。
東京で長谷さんと同棲を始める前の挨拶をするため、長谷さんのご実家のある佐治町へ。

そのときの鳥取の第一印象は…
「雪は降ってなかったけど、寒くて天気が悪いなぁ。」だったそう。笑

それもそのはず。黒田さんの地元である宮崎は冬でも晴れ間が多く暖かい。謂わゆる山陰の冬とは真逆です。

これだけ聞くと宮崎の方が良いような…

コロナ禍で地方への移住を考え、当時パートナーだった長谷さんと結婚して夫婦となり、仕事も二人で独立することを決めたとき、黒田さんが鳥取がいいなぁと思ったポイントは人口がいちばん少ないということでした。

人口が少ないということはいろいろチャンスがある!と、特に地方で仕事をするということを考えたときに鳥取の方が可能性があると、それが一つの決め手になったといいます。

鳥取に移住、新天地で仕事開始

コロナをきっかけに色々なことが動き出し目紛しい日々を過ごす中、2022年ついに鳥取に移住。同年、長谷裕太郎写真事務所を立ち上げました。

セルフリノベーションで作られたスタジオ

黒田さんは宮崎→鹿児島→東京からの移住、長谷さんは東京からのUターンですが高校卒業以来なので、仕事においてはお二人ともゼロからのスタートです。

コロナ禍以降話題となった『転職なき移住』とは少し趣の異なる一から積み上げていくお二人の挑戦。

最初は何から始めればいいかわからなかったとおっしゃる黒田さんですが、現在は基本的に鳥取の企業や店舗、個人の方からの依頼を受け仕事をされています。

仕事内容は、長谷さんは企業の広告写真や商品写真、最近ではPR用の動画撮影、黒田さんは長谷さんの撮影した写真を編集したり、パッケージやチラシ、バナーのデザインをしたりされています。

長谷裕太郎写真事務所が手がけるbeer広告

ここに至るまで、黒田さんはつながりの大切さをひしひしと感じていらっしゃいます。

知り合いのいない鳥取で、例えば地域で開催されているイベントやマーケットに顔を出し挨拶したり、地元佐治町の先輩たちにいろんな場所を紹介してもらったり。
日々、地域に根ざす営業活動をしていらっしゃいます。

最近は移住者や起業している人も増えているので、まずはそういった方が集まるコミュニティに参加しようと決めて、とにかく行動する黒田さん。

今までもこれからも、「やらずに後悔するよりやって後悔する方がいい」がモットーです。

そこへ行くと、「私も移住してきたんだよ」「私も最近新しい仕事を始めたんだよ」など、親身になって話してくれる方が多く、その輪がどんどん広がっていっているのだそうです!

鳥取での仕事は新たな挑戦

鳥取では、例えば黒田さんたちが得意としている広告写真を使用するオンラインショップなどを導入している企業や店舗はまだ少ないので、都会と比べて発展性のある仕事だとおっしゃいます。
同時に人口の少ない鳥取ではマーケットも少ないというマイナス面が挙げられます。

また「写真の良さで商品をより良く見せることができ、購買意欲が掻き立てられる」といったことへの理解もなかなか進んでいないので、写真の重要性を説明する必要もあるようです。

ですが初めて聞く内容に共感してくれる企業や店舗があるからこそ、鳥取ならではの仕事のやりがいや面白さがあるのかもしれません。

ご夫婦でフリーランスになり、好きなことを仕事にできているということ、その仕事が良くも悪くもすべて自分たちに返ってくるということが今感じている仕事の魅力です。

後者はより自分たちの仕事に責任を感じると同時に、制限をかけず頑張るモチベーションにつながっているそうです。

わからないことは夫婦2人で学びながら「なんとかなる」で、それさえも楽しんでおられるようでした。

鳥取での暮らし

佐治町では、夫である長谷さん、長谷さんのご両親とおじいさんおばあさんと大家族で暮らしていらっしゃいます。

地域の方とも年齢問わず積極的に交流し、今までにない価値観に触れる新鮮な日々。

撮影があるときは朝4時起きもあるという写真事務所のお仕事。
事務所で編集作業をするなど、基本的な1日の流れは9時ごろから仕事を開始し18時ごろに終了。

何より好きなことをして過ごす夜の時間を大切にしているそうです。

東京で働いていたころは好きなことをするのは土日限定でしたが、平日の夜にもそのような時間ができ、鳥取時間を満喫中。

また鳥取のお気に入りの場所は、佐治町の『さじアストロパーク』の駐車場(から見える景色)です。

佐治町の風景

山、田んぼ、畑、古民家が点々と散らばる風景は、まさに日本の原風景。
桜の時期がまた格別なのだそう!

自宅からも近く、コーヒーを持って出かけ、車の中で飲みながらその景色を眺めるのが最高の時間です。

さらに鳥取に来てからハマったものが「鳥取の民芸」です。

鳥取の民芸・因州中井窯

「鳥取にこんなに窯元があるとは知らなかった」とおっしゃる黒田さんの新しい趣味に民芸が加わったことは、「鳥取に来て心の余裕ができたから」だと振り返ります。

お気に入りの民芸の器で飲むお茶の時間がリラックスできる瞬間。
そのことに気づけたことは移住したからこそ得られたもの、かもしれませんね。

さいごに

自然が好きで写真が好きで、好きなことをやりたいときに。
周りの人たちを大切にしながら、控えめながらもいつも自分の気持ちに素直に行動する黒田さんの道は明るい!最後はそんな風に感じた今回のインタビューでした。

自宅の車庫の2階をリノベーションして作られた事務所のことなど、筆者としてはこちらの話も聞いてみたい!と、まだまだ話足りない気もしますが、鳥取での仕事や気持ちの変化など、さまざまなお話を伺うことができました。

今後移住や、移住先での仕事、地方での暮らしなどについて考えていらっしゃる方の少しでも参考になれば幸いです。

この記事を書いた人

吉井秀三

鳥取市鹿野町在住。東京で20年間IT関係の会社を経て、鳥取にUターン。 鳥取の魅力的な働き方ができる会社や、面白い働き方をしている個人の情報を発信していきます。

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