関係人口の入り口とも言える他拠点居住者は、それを支える定額でののシェアハウスや宿泊サービスなどの広まりと同時に、確実に増え始めています。仕事で全国を飛び回る人たちもその代表事例です。全国で病児保育の課題解決事業を展開する社会起業家の駒崎さんもその一人。駒崎さんが、最近、その経験からくる他拠点居住への課題意識をSNSに投稿され、多くの方の共感を集めました。その内容について私達も非常に強く共感したので、御本人にお願いし、そのまま寄稿していただきました。是非皆さんもご一読いただければ幸いです。 ネイティブ編集部

寄稿者プロフィール: 駒崎 弘樹  認定NPO法人フローレンス代表理事

1979年生まれ。認定NPO法人フローレンス代表理事、(財)日本病児保育協会理事長、NPO法人全国小規模保育協議会理事長の他、全国医療的ケア児者支援協議会事務局長。慶應大学総合政策学部卒業後、2004年NPO法人フローレンスを設立。日本初の「共済型・訪問型病児保育」サービスを首都圏で開始。10年、待機児童問題解決のため「おうち保育園」を創設。後に「小規模認可保育所」として国策に採用。14年、日本初の障害児専門保育所「障害児保育園ヘレン」を創設

仕事柄、日本中飛び回っている中での雑感を綴ります。

これから日本の人口は減り続け、地方は深刻な労働力不足・消費不足となってくるのは、特に説明が要らないくらい明白です。

地方自治体としては更なる合併が模索されるでしょうし、インフラを維持できない地方自治体は、離島や山間部等からは事実上の撤退を余儀なくさせられることかと思います。

そうした状況を危惧し、各地でIターンや移住を促進しようと努力を重ねているわけですが、実際に生活の拠点全てを移し移住することのハードルは非常に高い。

東京よりも住環境や食生活など、QOLは格段に良くなりますが、仕事が十分に無いことが、最も大きなボトルネックとして横たわります。

希望としての「人口のシェア」

一方で、そうした状況の中、注目されるのが、多拠点居住です。ジャーナリストの佐々木俊尚さんが有名ですが、彼は東京、軽井沢、福井県と多拠点に住むライフスタイルを送られています。

また、弊会も法人契約していますが、ADDressのような住居定額借り放題サービスを使えば、いろんな地域に住んでいく(アドレスホッピング)することが可能になります。

これはITやリモートワークの発達によって、仕事をするのに場所は問わない、という環境が進んだのが最も大きな要因でしょう。

移住は辛いけど、多拠点居住による長期滞在はアリ。

これであれば、「人口をシェアする」ことが可能になります。

定住人口を増やすのはハードルが高く、ほとんど多くの地域では不可能に近いですが、滞在人口を増やすことだったら、まだイケるのでは、というわけです。

子どもがいると無理

かくなる僕も、夢は多拠点居住です。冬は九州で、夏は北海道なんて、最高じゃ無いですか。

出張で日本中を見て回っていますが、やっぱり住むのとは違います。その地の友人達と絆を作り、その地の良さを体感していくのは、住まないとできないことで、そんなライフスタイルが送れたらなぁ、と。

仕事はどうするのかって?

経営者の僕ですが、社員とのコミュニケーションはチャットツールで。会議はzoomでできるので、特にどこに住んでいようとできるわけです。

唯一の障害はアナログな政府審議会と政治家の方々とのコミュニケーションだけですが、それも週に1日そういう日を作って対応すればやれそうな気もします。

結論。自分も含めて、かなり多くの人が地方から仕事できそう=多拠点居住で地方を活性化できそう。

(とはいえ、保育士や看護師さん等、「その場でその仕事をする」と言う方々は遠隔でのお仕事は中々難しいとは思いますので、こうした働き方ができるのはフリーランサーやプログラマ、デザイナ、ライター、一部経営者等に限られる側面はあろうかと思います)

でも。

でも、今のままだと、少なくとも僕は、個人的には多拠点居住は夢物語なんです。

なぜか。

それは僕には子どもがいるから、なんですね。

「転校」がボトルネック

東京の小学校から地方の小学校に連れて行ければ、大自然の中子どもを育てられて、東京ではできないトレッキングや海釣り等、子ども達と良い思い出作れるな、と思います。

しかし、問題は子どもの小学校です。

今の教育システムだと、地方拠点に来させるのに「転校」させないといけません。

その手続きたるや、膨大なもので。いったん辞めないといけないですしね。

また3ヶ月過ごした後、元の学校に「転校」させることなんて、考えるだけでも嫌です。

つまり、小学校の「学籍」は持ち運びが効かないわけです。ポータブルじゃ無いんです。

これ、めっちゃ不便じゃ無いですか?

別に多拠点居住じゃなくても、いじめとか不登校に子どもがなった時に、ちょっと人間関係悪いこのクラスがクラス替えになるまで別の小学校に移ろうか、っていう時も「転校」しか無いわけで。

一年の半分は沖縄の学校で、一年の半分は東京の学校で、とかできたら、友達2倍できるし、視野も広がるし、全然良いんじゃ無いの?とか思ったりするんですよね。

小学校ってある程度どこもフォーマットは同じだから、やれるのでは無いか、と。

私立中高はネットワーク化してほしい

また、子どもが例えば私立中学校行ったら、地方の公立学校と進度も違うから、なかなかそれも難しいよね、と。

そんな時に、東京の私立A学園と、佐賀の私立B中学が提携しておいてくれたら、季節ごとに両方の学校行けるじゃん、と。

Aに無かった部活をBで入れて、そこで本当に好きな競技に目覚めたり、みたいなこともあるかもしれない。

それを発展させて、「全国私立中高ネットワーク」みたいなものを作って、身分をポータブルにさせると、「あの学校行くと、関西の有名校にも振替入学できるらしい」みたいに、自校の魅力を増すことができるわけで。

どこかの自治体やってください

全国の自治体のみなさんは、これから来る多拠点居住の波に乗るんだったら、国家戦略特区に「学籍ポータブル特区」申請して、転校なしで学校変えられるようにしてください。

そうしたら、とりあえず僕は小学校1年生の息子と一緒に、一年の半分くらいは地方に住みます。(宣言)

トンがってる首長さん、ぜひ実現してみませんか?


[追記] フォロワーさんから徳島県が「デュアル・スクール」って言う政策やっているよ、と教えてもらいました。そうそう、これですよ。これは徳島県のモデル事業だけど、これを全国化してもらえたら良いんです。

以上

編集部より

この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事駒崎弘樹氏のFacebookへの投稿(2019年10月15日)を、御本人に許可をいただき転載させていただきました。オリジナルの投稿をお読みになりたい方は、駒崎氏のFacebookをご覧ください。