あけましておめでとうございます!本年もネイティブをご愛顧頂ますよう、何卒宜しくお願いいたします。今日(1月7日)から本格的な仕事始めの方も多いのではないでしょうか。4月1日に新たな元号も発表されるというニュースもあり、平成という時代もいよいよ終わりますね。この年末年始は、あらゆるメディアで「時代の検証」的な特集が目白押しでした。

さて、2014年に第二次安倍内閣によって掲げられた「地方創生」も、丸5年の節目を迎えます。この分野の2019年は、どんな年になるんでしょうか?私自身がそれを占うなどというのは、おこがましすぎるのですが、それでも最近強く感じ始めていることがあるので、年頭にあたり、ちょっと長くなりますが、自分なりに書き留めておこうかと思います。

「地方創生」で検索すると、「うまくいっていない」という否定的な記事が目につくようになってきました。関連するテーマの書籍にも、その課題の大きさや難しさ、困難の度合いを表現するものが多い気がします。

一方で、私が各地を訪れ、その地域に関わる様々な方たち、特に若い人(…と言っても今年52歳になってしまう自分にとって、会う人はだいたい自分より若いのですが…)からは、全く別の軸の感覚を強く感じるようになってきたのも事実です。

それは、「人生に対する価値観が大きく変化しているんだな」ということです。今更ではありますが、それを最近特に、本当に強く感じます。

昨今、巷ではこの世の中の不安定さの主な要因として、「資本主義」という社会の根源的な仕組みの限界だという論調が非常に多くなってきました。
一方で、それによってかつてのイデオロギー対立に戻るということも、非現実的なのは明白です。人生100年時代を迎え、AIやゲノムなど人間の根源を変化させるテクノロジーの進化も相まって、これまでとはレベルの違う変化にさらされた時代で、何をどう考えれば良いのか、誰しもがその足がかりを見いだせずに揺らいでいます。

そんな中、各地で活躍している人に出会うと、「彼ら」はあたかも、すでにその解を得ているかと思えるくらい、「生き生き」としていることに驚くことがあります。

変な喩えですが、あの「機動戦士ガンダム」に出てくる、「ニュータイプ」(一種のテレパシーのような能力を持つ進化した人類)に出会ったような気分です。
「彼ら」という表現からしてお分かりのように、正直言って私自身は、決して「ニュータイプ」ではありません。1991年に新卒で入社した我々”ラスト・バブル”世代と、今の20代〜30代半ばくらいまでの、ほぼ平成生まれの皆さんとは、やはりその価値観には大きな違いがある気がします。高度経済成長時代に少年期を過ぎした我々は、やはりその時代の価値観を刷り込まれています。しかし「彼ら」は明らかに、別の幸福感の基準を持っている気がします。少なくとも、そのアウトラインは掴んでいるようです。特に地域で活躍している人たちは、その傾向がより顕著な気がします。正確には、それは年齢や世代や、活躍している場所によるものではありません。若い人のほうが多いのは事実ですが、自分より上の世代の人でも、さっさと新しい価値観で世の中を捉え、それを踏まえた人生を歩んでいる人は数多くいます。そういう人に出会うたびに、自分はその「考え方」や「感覚」に魅了されてしまうのです。そのことが、もしかしたらこの仕事をしていて一番楽しいのかもしれません。自分はさながら、アムロやシャアや、カツ・レツ・キッカを理解しようとする、”ブライトさん”気取りなおじさんなのかもしれません(笑)。※ガンダムの登場人物の詳細説明は割愛します。

その「新しい価値観」というのが何なのか。これはまだ整理しきれていないのですが、おおよそでいうと…

・何につけ共有し、独占しようと思わない
・大富豪に全く憧れない(贅沢や所有を求めない)
・今を大切にする
・自分を大事にする
・社会に貢献したいという意欲が強い
・人との繋がりを大切にする
・現実的である

という要素は揃っていると思います。ともすると無欲な修行僧のような感覚ではと誤解されがちですが、決してそうではなく、きちんと必要なお金をしっかり稼ぐことも考えています。無責任さや熱量の低さは感じません。むしろ逆です。ただ、いわゆる精神論的な感覚には距離をおいています。こうした感覚が強く、更に「行動力」や「主体性」が強い人が、より多く「地域での生き方」にその価値観の発揮場所を見出しています。これは、「全然うまくいってない地方創生」という側面とは全く別の、もう一つの「地方創生のリアル」だと思います。そこには、単純に「希望」と言って良いのかわかりませんが、明らかに今までとは違う時代の、違う価値観の芽生えを強烈に感じます。

こうした価値観に沿う、新たな社会の基盤となる考え方を、現代のいわゆる「新自由主義」を基盤とした資本主義のアップデートした姿として、「◯◯資本主義」という呼称で掲げる書籍も、数年前からいろいろと見かけるようになりました。藻谷浩介さんの「里山資本主義」や、原丈人さんの「「公益」資本主義 」などは、その代表的な著書で、私も読んで深い感銘と共感を感じました。

そんな中、昨年末に上梓された、カヤックの柳原さんの著書「鎌倉資本主義」は、その価値観を非常に明快に整理された、自分としてはさらに納得度の高いものでした。(この書籍については、別に書評コラムを書かせていただきたいと思っています。)

こうした考え方は、私の中では「地域資本主義」という言葉に集約されて、一つの大きな流れになってきているように思えてなりません。「地域」という身近な環境に根ざす経済的・社会的・環境的な資産を活かし、より実感に基づく価値観を基盤にした幸福を追求していこうというのが、「地域資本主義」だと自分は理解しています。これは、前述の「ニュータイプ」の感覚に非常にマッチするものに違いありません。
ただ、「地域」という単語は、「Local」と訳される事が多いがゆえに、いわゆるグローバル資本主義との対比だと理解されることは多いですが、それはある意味、間違った認識だと思います。というのも、「地域資本主義」の「地域」というのは、エリアや規模の話ではなく、ある意味「価値観」の話しだからです。例えて言えば、「見栄えの派手な衣装(アウターウエア)」を身にまとう生き方より、「自分の肌に直接触れるインナーウエア(肌着)」を重視し、実感できる心地よさにもっと正直になろう…ということかなと。(うまく説明できているか自信ないですが。)その「インナーウエア」には、地球環境や、社会的規模の人的繋がりも含まれるので、規模としてはやはりグローバルな視野に立たざるを得ないのです。

話は少しそれますが、日本語の「地域」もしくは「地方」と、「Local」という英語は必ずしも一致しないと自分は思っています。むしろ誤用されることが多い気がします。英語のLocalは、主に「商圏」を指します。Local Business は、喫茶店や八百屋さんなどの「ご近所をお客さんにしている商売」のことです。日本人には「地方に本社のある会社」を「Local Business」と思っている人が少なくない気がします。当然、愛知県に本社のあるトヨタがグローバル企業であるように、Businessにおける、Local/Globalは所在地ではなく商圏のことなのです。そういう意味では、自らの地域はもとより国内の人口が減少し、その商圏が縮小する日本の各地域は、当然、ビジネスとしては「グローバル」に行かざるを得ないのです。ですから、「地域」資本主義だからといって、地域を商圏とするだけの事業でやっていこうという話ではありません。むしろ逆です。ただ、グローバル”覇権”主義ではないということが大きな違いなわけです。

地域に広がる価値観と、それを説明する理論が世の中に広がり、多くの人の中でそれが納得感を醸し出していく…。そんな雰囲気の予兆を、少し前から感じてきました。それが、平成という時代の終わりとともに、より多くの人たちの中で理解されていくのが、この2019年という、まさに”新たな元号”の元年に重なるのではないか。それが今自分が感じていることです。
もちろん、こうした仕事をしているので、ポジショントークという面も否定しないですが(笑)。でも、それを差し引いても、本当にそう思います。人生100年時代, 働き方改革、共創、シェアリング・エコノミー、そして地方創生。これらの時代を象徴するキーワードは、すべて一つの根っこでつながっているはずです。それは、人生の幸福をもう一度再定義しようとする、私達の本能的な欲求から来ているものだと思います。そういう観点からも、特に私と同じかそれより上の世代の人が、「地方創生なんてうまくいかない」というニュアンスのことを、軽々しく言うのは無責任です。若い世代から順に、新しい時代を生き抜くための価値観を醸成し始めています。それを社会全体に橋渡しする責任が、特に私と同じくらいの「ハザマの世代」にはあるような気がしています。いえ、そこまで大仰に考えなくても、これから「地域」は益々面白くなると、私は確信しています。それを仕事にできるなんで、こんなに幸せなことはありません。皆さんも、今年こそ「地方創生業界」への進出・転身を考えてみませんか?

文:ネイティブ倉重

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【著者】ネイティブ株式会社 代表取締役 倉重 宜弘(くらしげ よしひろ)
愛知県出身。早稲田大学 第一文学部 社会学専修 卒業。金融系シンクタンクを経て、2000年よりデジタルマーケティング専門ベンチャーに創業期から参画。大手企業のデジタルマーケティングや、ブランディング戦略、サイトやコンテンツの企画・プロデュースに数多く携わる。関連会社役員・事業部長を歴任し、2012年より地域の観光振興やブランディングを目的としたメディア開発などを多数経験。2016年3月にネイティブ株式会社を起業して独立。2018年7月創設の一般社団法人 全国道の駅支援機構の理事長を兼務。