[おすすめ書籍]『東京脱出論〜藻谷浩介×寺本英仁 共著〜』おこもり時間に読みたい!
誰しもにとって未曾有だったこの1年を締めくくるのにオススメ!本著は、あの「里山資本主義」で著名な地域エコノミストの藻谷浩介さんと、島根県邑南町の職員で、食を中心とした町おこしで目覚ましい成果をあげている寺本英仁さんという地方創生業界のど真ん中のお二人が、コロナ禍の緊急事態宣言の真っ只中にZoomで対談した内容をまとめたという、正に「今年ならでは」の著書です。その内容は、あの最初の混乱や緊張感の中で多くの人がそうだったように、正に未曾有の状況で感じた葛藤や問題意識が、当時の空気感の中での会話としてありありと記されています。ライブ感のあるお二人の対談によって、当時の気持が生々しく蘇ってきます。あれから半年以上が過ぎ、また違う段階を迎えて尚、事態は未だ収束の兆しもありません。それなのにある意味"懐かしい"というか、もっと大昔のことのような不思議な感覚になります。それと同時に「あのときの感覚は忘れてはいけない」ということを強く感じます。思えば約10年前、私達は東日本大震災でも同じような(といっては語弊があるかもしれませんが)経験をしました。でも直接被災した人以外は(自分も含めて)、すでにあのことを忘れたかのように過ごしている人がほとんどといっていいでしょう。いい意味で私達は「忘れる」動物でもあります。でも、同時に大きな変化に対応するためには、やはりある程度の「感覚」は脳に刻み込む必要がある。そう強く感じました。2020年は、コロナ禍によって多くの人の価値観が本当に大きく揺らぎました。今を生きる私達には絶対忘れられない年になるのは、間違いありません。これほどまでにテレワークは普及し、働き方の感覚が激変したことはかつてありません。地方への関心が高まり、移住を真剣に考え始めた人が急増したとも言われています。お二人はある意味、地方の現場を最もよく知る代表的な存在です。以前から現代社会の危うさや、地域でこそ育まれる可能性のある新しい価値観、またそれらに伴う社会の変化ついて考え、行動し、発信してきたからこそ、それらをコロナ禍が加速した部分をより強く受け止め、その本質を非常にわかりやすく語れているのだと思います。2020年は、世界中の人達が「これからどうやって生きていこうか」という"人生最大のテーマ"に向き合った年でした。その思考やプロセスはもちろん様々ですが、こと日本においては、みんなが薄々気づいていた日本固有の「生きづらい社会」への共通の問題意識に、コロナ禍によってかなりダイレクトに問いかけられたとも言えるでしょう。お二人の言葉のラリーも、正にそのボールを的確に打ち返し続けるようなリズム感と納得感で構成されているようでした。あなたにとっての"東京"とは何か?本著は「東京脱出論」というセンセーショナルな題名が、非常に大きなインパクトをもって目を引きます。もちろん前述の論旨の中で、過度に人口が集中するデメリットが元凶である"地方創生"や"少子高齢化"の問題を論じるときに、「東京」は正にその問題そのものを表す言葉です。しかしそれ以上に本著で語られている"東京"というのは、もしかしたら人それぞれ違うものを表すための、「象徴的な言葉」なのかもしれないと私は感じました。近年大きく変化する社会環境のなかで、コロナ禍がその変化を加速する状況に飲み込まれてもなお、私達は何かに「囚われて」いるのではないか。「呪縛」なのか、「固定概念」なのか、はたまた本著で何度も使われる「共同主観」なのか。私達自身が変化し進化すべきベクトルとは”逆”に作用するものに対して、個々人がどう向き合ってどう動いていくべきか。それに気づいた人からは、ほんの少し先の景色がどのように見えるか。本著のあちこちに、そのエッセンスがちりばめれていると感じました。「コロナが日本を変えてくれるわけではない。この状況に置いて、自分がどう変わるかだ」本著のエピローグに、藻谷さんはこのような主旨のことを書かれています。このエピローグにはさらに深く強烈なメッセージが加えられています。私にはそれが本当に強くズシンと響きました。いい意味で、あの緊急事態宣言下の自分の脳細胞の活性状態を蘇らせてくれます。3~4時間で読める読みやすさと、大きな気づきを与えてくれる良著で、この年末年始には本当にオススメです。(↑クリックしてAmazonへ) [...]