ー最近では、地域の需要や宿泊者のライフスタイルに合わせた様々な形態の宿泊施設ができていますが、そこからアイデアを得ることやライバルだと考える業態はありますか。

アイデアはこれまで信頼関係を築いてきた、エッジの利いた人たちと相談しながら考えることが多いです。また昔に比べ、世界中の情報が得やすくなっているのも大きい。いわゆる従来型のホテルオペレーターよりもシェアハウスや民泊出身の人達や異業種から入ってこられる方のコンセプトにはユニークなものが多く、いつも刺激を受けています。いずれにしても、同じ目線と感性を共有しながらリゾートづくりを考えられるパートナーは重要です。

特需に乗っかった形の民泊の人たちは、これから合法化の洗礼を受け多くは淘汰されると見ていますが、一部は生き残ってくるでしょう。新しい発想と活力をもつそういったプレイヤーはライバルでもありますが、宿泊業という大きなマーケットを共に切り拓いていく仲間とも言えます。

私は、80歳までやれる仕事を、と思ってこの会社を創業しました。宿泊業界は、人類最古の業種とも言われ、決してなくなることはない。いくらVR(仮想現実)技術が発達しても、温泉につかって「あー」と声が出る瞬間の再現は不可能だし、再現できたところで虚しいだけでしょう。未来に更に良い宿、地域の目的地となるリゾートが増え、地域の衰退を食い止めさらに活性化させていくためには、健全な業界の成長は欠かせないと考えます。

ー地域でのビジネスや宿泊業界を志す人々への言葉と、松山さん自身の今後の展望を。

リゾートづくりに限らず、やり続けること、粘り強く続けることが大事です。失敗をしても経験は蓄積していくもの。昔から「勝つための最も確実な方法は、勝つまでやめないことだ」という言葉もあります。

会社を立ち上げてから約7年が経ち、当初から様々な人の協力もあって弊社のスタッフや宿の運営のレベルは徐々に高くなってきました。現在、スタッフは約20人で、年間売上は約3億。効率よく、安く提供することとは対照的に、多少は非効率でも良いものを提供していくことに妥協はしません。これからも長い目で、先を見据えながら着実に、かつユニークな宿を提供できるよう取り組んでいきたいです。

取材・文:高柳圭
撮影:梶井夏葉
写真提供:株式会社 温故知新

●松山知樹

デトロイト生まれ、大阪育ち。東京大学大学院都市工学修士。
ボストン・コンサルティング・グループなどを経て2005年星野リゾート入社。客室清掃の生産性向上などを担当した後に取締役に就任。その後、温故知新を2011年に創業。

●温故知新

  • 代表取締役:松山知樹
  • 所在地:東京都新宿区新宿5-15-14 INBOUND LEAGUE 601号室
  • 設立:2011年2月1日
  • 資本金:2,400万円

>コーポレートサイト