この記事の目次
記事のポイント
- 全国初、広島へ地方進出する企業のスタッフとその家族までもが対象になる助成制度
- 県・市・町が連携するオフィス誘致促進助成金で5年間オフィス賃料が実質タダになるケースも
- 企業誘致に注力した先に目指すのは「イノベーション立県の実現」
広島県なら最大1億円 わずか3人のオフィスも対象
「社員の提案がきっかけで地方進出を検討する企業は増えています。」そう話すのは、広島県で企業進出のサポート窓口を担当する広島県商工労働局県内投資促進課の八巻淳さんだ。「人材不足で優秀な社員を手放したくないのかもしれません。社員の『移住したい!仕事は続けたい!』という思いを尊重するような企業には、ぜひ成功してほしいです。」
広島県商工労働局県内投資促進課の八巻淳さん
広島県の助成制度は全国トップクラスの充実ぶりだ。
「企業人材転入助成」や「研究開発機能拠点化助成」を利用すれば最大1億円の助成が受けられる。製造業、運輸業、サービス業などを行う企業が、研究開発、企画、総務、研修といった「複数事業所に対する業務」または「全社的な業務を行う部門」を広島県内に置き、3人以上が勤務する場合が対象となる。事業所の移転・新設に際して、初期コストの半額や、転勤するスタッフと一緒に暮らす家族1人につき100万円などが、企業に対して支払われる。家族も対象にしたのは広島県が初めてだ。1人につき100万円、つまり5人家族なら500万円となる。
最大5年間、オフィス賃料無償のエリアも
さらに調べていくと、広島県内には、最大1億円の助成メニューとは別に、オフィス賃料が大幅にカットできる地域があった。「地域活力創出型オフィス誘致促進助成」という制度で、県と市・町が連携して行っている。たとえば政令指定都市の広島市や、新幹線のぞみ号が停車する福山市では3年間、歴史的な町並みやワイナリーのある三次(みよし)市では5年間も、オフィス賃料が実質タダになる。
助成制度を利用するには、注意すべきポイントもある。まず、助成内容や条件は変更される可能性があること。今回紹介した広島県の制度(https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kigyourittiguide/subsidy.html)は2019年度時点のものだ。また、業種や従業員数など県や市・町が定めた条件を満たし、進出前に申請手続きを開始する必要がある。さらには、助成金はそれぞれ上限が設けられており、実際に受け取れるのは少なくとも事業を開始して1年以上経過した後だ。これらの情報がWEBサイトに詳述されているので、よく確認してほしい。
役所の担当者がワンストップでフルサポート
広島県では、進出を検討する企業からの相談を県内投資促進課の担当職員が一手に引き受ける。助成制度の説明や申請書類作成時のサポートを行うだけでなく、オフィス物件の視察に同行したり、別部署や市役所との橋渡し役をかってでたり、外国人スタッフや家族の移住が多いケースでは生活に関する情報提供も積極的に行うという。準備段階から密にやりとりを行うので、進出するころには、担当者同士の絆が生まれていることも珍しくない。
ところで広島県は、製造品出荷額は中・四国、九州エリアで12年連続トップ(※1)と、すでに活発なビジネス環境を誇っている。それなのに、なぜここまで積極的に企業を誘致するのか。
背景には、「イノベーション立県の実現」という目標がある。県外・国外からさまざまなプレイヤーを呼び込むことで、地域全体に刺激を与え、新たなビジネスを加速させたい考えだ。
同時に、増える移住希望者に対して、多様な就職先を確保したいという側面もある。広島県は、「仕事をしながら暮らせる地方」として、4、5年前から現役世代の支持を集めており、今では西日本No.1(※2)の人気ぶりだ。大学進学率第4位(※3)と、教育熱心な地域でもある。県外に進学・就職した広島出身者がUターンするケースも多い。
「実は私も東京で進学・就職したUターン組なんです。コンパクトな都市と子育て・教育環境が移住の決め手となりました。3人の息子たちが成長したときに、広島県が今よりもっと“おもしろい場所”になっていれば。そのためにもチャレンジ精神にあふれた企業に来てほしいですね。」(八巻さん)
さて、上司に地方進出をプレゼンしてみたものの、望みが薄そうだと感じたら、ひろしま就職応援サイト「GO!ひろしま」を見よう。広島県内の就職事情がまとめられている。
●広島進出企業が利用できる助成制度
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kigyourittiguide/subsidy.html
●ひろしま就職応援サイト「GO!ひろしま」
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/hiroshima-uij/
(注記)
※1:経済産業省「平成28年経済センサス―活動調査」より
※2:NPO法人ふるさと回帰支援センター調べ「移住希望地域ランキング2017年」
※3:文部科学省「平成29年度学校基本調査」より
●広島県商工労働局県内投資促進課
■広島県庁内 商工労働局 県内投資促進課
- 所 在 地 : 〒730-8511 広島県広島市中区基町10-52
- 電 話 : 082-223-5050
- 広島県 ホームページ
- 広島県商工労働局県内投資促進課 ページ →問い合わせフォームはこちら
■広島県東京事務所
- 所 在 地 : 東京都港区虎ノ門1-2-8 虎ノ門琴平タワー22階 【TEL:03-3580-0851】(担当・折田、浅野)
以上
※取材:2019年9月