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記事冒頭の写真はゴリラの赤ちゃんだ。黒目が大きくてカワイイと思った方もいるかも知れないが、よく見ると「白目(しろめ)」が白くない。実はゴリラやチンパンジー、オランウータンなどの類人猿の「白目の部分」は人間ほど白くなく、むしろ黒目に近い褐色なのだ。
しかし不思議なことに、霊長類の中で我々人類だけが「白目が白い」のだそうだ。これはなぜなのか?
実はこの理由が、日本の研究者によってほぼ解明されている。
ヒトだけが「白目を白く」した理由
あえて結論から言うと、その理由は、人間だけが「食卓を囲む」ようになったからだそうだ。
もう少し説明すると、白目があると向き合っている相手が、お互いに「どこを見ているのか」がよく分かる。
実は、ゴリラやチンパンジーは互いに向き合って食事をすることがないらしい。なぜなら、白目が白くないことで視線が明確でなく、相手が自分の顔を見ているのか、自分が食べている食べ物を狙っているのかが分かりにくいからなんだそうだ。
逆に人間は白目が白いため、その疑念がわきにくい。つまり安心して仲間と食卓を囲めるようになったんだと。
さらに丁寧にたどると、こうだ。
●人間は、立って歩くようになった。
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●そうすると必然的にメスの産道が狭まり、子供がまだ成熟しないうちに出産するようになった。
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●必然的に授乳するメスが子育てに長時間携わるようになる。
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●するとオスが獲物を獲ってきて、子育て中のメスのいる家族や集団で食卓を囲まざるを得なくなる。
↓
●そのため安心して向き合って食事ができるように、白目を「白く」進化させた。
…おそらく、そういうことらしい。
これはもちろん私が言っているのではない。
ヒトだけが「白目が白い」ことは、京都大学野生動物研究センター教授の幸島司郎先生らのグループが発見したとのこと。(参考記事はこちら)
自分がこの話を聞いたのは、もう随分前だが、NHKで爆笑問題が出演していた「爆問学問」という番組だった。現在の京都大学総長の山極壽一先生がこのことを話されていて、非常に強い衝撃を受けた。山極先生は、世界的に著名な霊長類学者にして、チンパンジー研究の第一人者だ。私のふるさと、愛知県犬山市にある京都大学霊長類研究所と併設された日本モンキーセンターにも務めていらっしゃったそうで、勝手に親しみも感じているのが、この話を記憶している一つの理由かもしれない。
どうりでWithコロナが辛いわけだ
この思わぬ人類の進化の道筋に照らすと、私達が現在進行形で対峙している「コロナ対応中の生活」の辛さの理由が見えてくる。
私達は今、(同居する家族以外は)食事はもちろん相手と向き合って、対面でコミュニケーションをして、正に「相手の白目」を直に見ながら話す機会を奪われている。「3密」を回避し、飛沫を浴びるリスクを可能な限り減らすためだ。これは前述の進化の過程を真っ向から否定するようなものだ。ましてや飲食店で集いながら食事をすることは、私達人間にとって「ヒト」たる所以とも言えるくらい大切なことなのだ。
こちらの記事:(急速に広まるWeb会議。見逃しがちな最大の欠点とその回避策とは?)でも書いたのだが、この課題はもしかしたら、まだ現在のWeb会議システムでも解消しきれていないのかもしれない。もちろん画像の解像度や音声のリアルさが向上すれば、そうした不安感は軽減されていくだろう。しかし、やはりリアルに目と目を合わせることに匹敵するまでには、もう少し時間がかかりそうだ。
みんな同じだからこそ
私達はやはりリアルに対面することに、思った以上に依存している動物なのかもしれない。
そう考えると、今私達が感じているストレスの受け取り方も変わってくる。いってみれば、人間だからしょうがないのだ。許容度の違いこそあれ、みんな同じ理由で、同じ負荷を感じているはずだ。そう思いながらWeb会議に望むと、少し無理して笑顔を作ろうかなとも思えてくる。逆に少しオーバーに「うん、うん」と頷かないと、相手はきっと不安を感じていることだろう。
同時に我々は「白目の白さ」だけではなく、相手の気持ちを(ある程度)想像する能力を持つ進化も遂げている。自戒の念を込めて言うと、今まさにその能力を心置きなく発揮すべき時ではないだろうか。
つい先日、山極先生がテレビのインタビューでこのように語られていた。
「人間はいつもこうした変化の中で、新しいコミュニケーションのあり方を身につけて進化してきた。今回もそれができるはずだ」
その言葉を信じたい。
文:ネイティブ倉重
【著者】ネイティブ株式会社 代表取締役 倉重 宜弘(くらしげ よしひろ)
愛知県出身。早稲田大学 第一文学部 社会学専修 卒業。金融系シンクタンクを経て、2000年よりデジタルマーケティング専門ベンチャーに創業期から参画。大手企業のデジタルマーケティングや、ブランディング戦略、サイトやコンテンツの企画・プロデュースに数多く携わる。関連会社役員・事業部長を歴任し、2012年より地域の観光振興やブランディングを目的としたメディア開発などを多数経験。2016年3月にネイティブ株式会社を起業して独立。2018年7月創設の一般社団法人 全国道の駅支援機構の理事長を兼務。
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