懸け橋になる、福岡移住計画の想い

―東京にはない、地域特有のコミュニティに憧れて移住する人も多いですが、それ自体がネックになることもあるのですね。

ネックになるということではなく、順序と時間の問題ですね。丁寧に時間をかけていかないと着地に失敗します。その代わりちゃんと手順を踏んで、丁寧に進めれば、地域の方は大きな力になってくれます。友達の畠山千春さんは、糸島のかなり山の方の里山でシェアハウスを展開していますが、地域とも丁寧に付き合っていった結果、地元のみなさんと物々交換をしたり、豊かなライフスタイルを実現しています。

でも、僕たちの家族がそれを超えるために手を貸してくれたのも、その地域のコミュニティや仲間と呼べるような人々でした。一人では何もできないし、助けてくれる方々の存在のありがたさを感じています。自分も移住者と地域の人を繋ぎたい、そうして始めたのが福岡移住計画です。IT企業だからこそできる、新しい形での居場所の提供、職の提供、住まいの提供の3本柱で事業を展開しています。

―居場所の提供とは一体何のことでしょうか?

具体的には遊休不動産を活用したシェアオフィス事業を行っています。現在福岡ではSALT、RISE UP KEYA、HOOD天神、能古島TURTLEの4拠点を運営していて、この冬に久留米に新しいシェアオフィスを久留米移住計画と一緒に運営を開始します。

天神エリアに「SALT」というフラッグ・シップオフィスがありますが、中心地から20分ほどというアクセスの良さで、海の目の前という最高の環境です。

海を目の前に臨むシェアオフィス「SALT」

salt1

salt2

salt3

salt4

salt5

salt6

―海の目の前は一等地だと思うのですが、どうして遊休資産になっていたのですか?

このSALTがある今宿エリアは、天神から電車で約22分という好立地ではあるものの、地元の人からすると辺鄙な場所で、わざわざ中心地から離れる理由がないということと、最近では観光地としても盛り上がっている糸島との中間地点にあってどちらかというと通過するだけの場所になっていました。

たまたま、この今宿の海の目の前の一戸建てを借りたことがきっかけとなり、よそ者の視点で価値に気づき、海の目の前で働くという新しい働き方を提案できました。入居者もここ1年で倍増していて、フロアも拡大するなど、ニーズの高まりを感じています。しかし、単にロケーションだけでなく、IT企業だから出来る、今までになかったサービスの提供を目指しています。

―具体的にはどのようなことでしょうか?

移住者と地域の人々、モノとサービス、関係するものすべてを繋ぎ、流動させるということですね。移住計画のコワーキングスペースでは、地縁のない移住者同士が互いに仕事を作りだすサポートをしています。また、地域の側にもシェアオフィスを利用しているスキルを持ったワーカーを紹介することで、人材が地域でも生かされます。繋ぐことで、職そのものを作り出すサポートをしているんです。

―それが2本目の柱、職を作り出しているということですね!最後に「住」の取り組みついてお聞かせください。

福岡移住不動産として展開しています。今まで空き家を移住者が借りるには家主の不安感などもあって、ハードルが高かった。移住不動産は仲介役として、移住者のパーソナルな面まで厳しいチェックを行い、オーナーに紹介するので、地域でも安心して新しい移住者を迎えることができます。

―従来の仲介業とはどこが違いますか?

地域側のニーズも満たせることですね。例えば、今度夏祭りがあるんだけど、神輿の担ぎ手がいない。新しい移住者は神輿を担いでくれるのかね?とか(笑)。借り手は部屋の間取りや家賃、交通の便などのスペックで住む部屋を決めがちですが、本当はここに住むことでどんなコミュニティに属せるかも重要だと思います。移住の場合は特に気になるポイントです。移住不動産は両者のニーズを満たす適切なマッチングのサポートをしています。

―ITによって情報が開示されることで、不透明さによる不安を解消したということですか?

そうですね。両者の安心感が大きく向上したと思います。また、地元の人と移住者が繋げるためのイベントや、耕作放棄地を利用した農地のシェアリングエコノミー、移住不動産の住民同士が知り合うきっかけづくりなどのサービスも提供していければと考えています。移住不動産をきっかけに、本当に豊かな暮らしが生みだせていると実感しています。

―移住者にとっても、地域にとっても好循環を生みだせるということですね。

シェアオフィスで働き、移住不動産で紹介した家に住む。その中でデザイナーやプログラマーといった移住者が、地域の子供たちのために自分たちのスキルを教える教室を開いたり、地域の未来をつくる一端を担えたらいいなと今は考えています。移住して5年たち、移住を支えてくれて多くのことを学ばせてくれた福岡へ、少しずつ還元して行ければと思っています。

須賀様講演

取材・文:編集部
写真提供:スマートデザインアソシエーション

福岡移住計画 概要

名称
福岡移住計画(運営元:株式会社スマートデザインアソシエーション)
事業内容
シェアオフィス開発・運営、不動産・仲介、地域活性化支援
(Web制作・マーケティング、メディア運営、システム開発)
創業
2002年7月
住所
・東京オフィス
〒155-0031 東京都世田谷区北沢3-27-4 立木ビル2F
・福岡オフィス
〒819-0168 福岡県福岡市西区今宿駅前1-15-18 マリブ今宿シーサイドテラス3F

>福岡移住計画公式サイト