石川県金沢市出身の堀内 快さん。富山県高岡市の大学と大学院で美術鋳物について学び、2020年に芦屋町が支援する工房業務従事者として「芦屋釜の里」に就職。芦屋町が誇る茶の湯釜・芦屋釜を復興させるため、釜作りの技術習得や伝承に励んでいます。

Q. 芦屋町に移住するまでの経緯を教えてください。

大学で鋳造について学んでいたので、将来はその知識を活かせる仕事に就けたらいいなと考えていました。大学院1年目の時に偶然「芦屋釜の里」のことを知り、夏休みの旅行を利用してどのような施設なのか見学してみようと。大量生産するのではなく、史実に基づきながら技法を研究し、その技法によって何ヶ月もかけて制作する芦屋釜※1はとても新鮮でした。さらに、600年ほども前の職人がどのような気持ちで釜を作っていたのか?なぜこのような形にしたのだろうか?など、いろいろと想像を膨らませていくうちにワクワクしてきました。

とはいえ、その時点ではまだ「芦屋釜の里」に就職するとは思ってもいませんでした。通っていた大学のある富山県高岡市は鋳造業が盛んなので、そちらでの就職を視野に入れていたんです。ところがその後、今の職場の先輩から「工房業務従事者※2の公募があるので応募してみませんか?」とお誘いをいただきました。もともと文化財の研究をしたいという気持ちがありましたし、伝統を重んじ、貴重な資料が身近にあるという「芦屋釜の里」の恵まれた製作環境は、全国的に見てもなかなかないと思い、応募することを決意。無事に採用試験に合格して、2020年の春からこちらで働いています。地元の金沢市からかなり離れてしまうため、最初は親も寂しそうにしていました。しかし、芦屋釜という伝統のある茶の湯釜に携わるということもあり、最終的には喜んで送り出してくれました。

※1:芦屋釜…14世紀半ば頃から現在の福岡県遠賀郡芦屋町中ノ浜付近で作られていた鋳鉄製の茶の湯釜。9点ある国指定重要文化財の茶の湯釜のうち、8点を芦屋釜が占める。
詳細は「芦屋釜の里」のホームページを参照。
https://www.town.ashiya.lg.jp/site/ashiyagama/

※2:工房業務従事者…「芦屋釜」の復興・鋳造技術の継承のために、芦屋町が支援する鋳物師の技術者。

堀内さんが勤務する「芦屋釜の里」。美しい日本庭園の中に芦屋釜の復興工房や資料館、茶室があります。

「芦屋釜の里」に併設された資料館にて。芦屋釜の歴史や製作工程が、展示物やビデオで紹介されています。

 

Q. 移住してよかったことは何ですか?

日常生活の中で、町のみなさんの温かさに触れられることです。引っ越してすぐの頃に、職場の先輩から近所のお弁当屋さんを紹介してもらったのですが、スタッフの方がとても親切なんですよ。「若者がこんな所まで一人でやって来て」と気にかけてくれ、今でもよくしていただいています。よく行く居酒屋では、たまたま居合わせたお客さんがフレンドリーに話しかけてくれます。「なぜ芦屋まで来たの?」と興味を持ってくれて、そこから会話が広がっていくのですぐに場に溶け込むことができます。金沢市や高岡市の方も優しかったですが、芦屋町に来てから人の温もりに触れる頻度がさらに増えました。

 

Q. 移住するにあたり不安だったことや、現在の生活面で大変なことはありますか?

アパートの近くに航空自衛隊の基地があるため、騒音の不安がありましたが、実際に住んでみると平気でした。それどころか、ベランダから飛行機が飛んでいる様子を見て楽しんでいます(笑)。また周辺には、スーパーなど生活に必要なお店がそろっているので便利です。駅までは少し距離がありますが、車があればまったく問題ありません。車だと福岡市まで1時間くらいで行くことができて快適ですよ。

 

Q. 休日はどのように過ごしていますか?

よく行く場所は、「洞山」と呼ばれる岩山の周辺です。「芦屋歴史の里」※3のスタッフの方から教えてもらったのですが、なんと、江戸時代に座礁した船から流れ出た伊万里焼の破片が、海岸に打ち上げられているというのです。気になって引き潮の時に行ってみたのですが、本当に破片が見つかって感動しました。今でもよく探しに出かけていて、コレクションも増えてきました。

美術館巡りも楽しみの一つです。福岡県には文化施設が多く、九州国立博物館や福岡市立美術館といった素晴らしい美術館がたくさんあります。本州ではなかなかお目にかかれない中世の東洋美術も鑑賞できるんですよ。また、最近は弓道場に通い始めました。高校と大学時代に弓道をしていたのですが、そのことを職場の先輩に話したら、アパートの近所に弓道場があることを教えてもらったんです。さっそく利用してみたのですが、久しぶりすぎて筋肉痛になりました(笑)。今後はコンスタントに通いたいと思っています。

※3:芦屋歴史の里…遠賀川河口の港町として発展した、芦屋町の歴史を紹介する施設。考古資料や農耕具、商業・交易関係品など約6000点を収蔵。
https://www.town.ashiya.lg.jp/site/kanko/2363.html

「洞山」周辺の海岸で、伊万里焼の破片を探す堀内さん。「洞山」は、風化でできた大きな洞穴があることで有名。

海岸で拾った伊万里焼の陶片。

 

Q. 福岡県の魅力を教えてください。

福岡県には陶芸の窯元が多くあるので、お店で器を見ているだけでもいろいろな種類があって楽しいです。また、北陸地方と違ってあまり雪が降らないので、スタッドレスタイヤに変える手間や費用が少ないのは助かります。一方、芦屋町は先ほどもお話ししたように人の温かさが魅力です。個人的には、海辺の風景も気に入っています。遠賀川を挟んで山鹿と芦屋のエリアに分かれるのですが、山鹿の海辺は岩場が多く、反対側の芦屋は砂浜が多いんです。そういった景色の違いを楽しみながら散歩してみると面白いですよ。景色といえば、目の前に響灘が広がる「夏井ヶ浜はまゆう公園」、夕日が美しい「なみかけ大橋」もおすすめです。たまにランニングをする遠賀川沿いは、夜になると河口ぜきに等間隔に設置されたライトが、水面に映ってきれいです。ほかにも魅力と言えば、魚が美味しいという点は外せません。アパートの近くにあるスーパーには、鯛、イカなどたくさんの新鮮な魚介類が並んでいます。

なみかけ大橋からの夕景。

「夏井ヶ浜はまゆう公園」は、「恋人の聖地」としてカップルに人気。高台に建つ鐘は、堀内さんの先輩たちが製作したものだそう。

 

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