2022年8月11日(木)に、田舎暮らしを満喫しながら「木こり」として活躍されている方からお話を伺うオンライントークイベントを開催しました。

今回ゲストにお招きしたのは、田村市で林業を営んでいるフォレストクリエイト桑原代表の桑原直人さん。自然の中で生活し、自然相手に仕事をすることで感じられる「豊かさ」や「幸福感」について、生活面に重きを置いてお話ししていただきました。

ゲスト:桑原直人さん(フォレストクリエイト桑原代表)
林業の担い手育成を目的とした助成制度「緑の雇用」を活用し、20歳から林業に従事し、今年で20年目に突入。
2015年に独立し、現在は森林を所有する個人からの委託業務を中心に、調査業務から、伐木、搬出、丸太運材、特殊伐採も行っている。現在、自身が子ども時代に遊び育った裏山を購入し、一部を住宅用地として自宅を建て、家族4人で自然と共生した生活を送っている。

 

Well-Beingとは、健康で安心でき、満足できる生活状態であるという状況を示す言葉で、直訳すると『幸福』という意味になります。身体的にも精神的にも社会的にも、全てが満たされている状態を指す言葉として、WHOなどでよく使用されています。
今回お話を伺っていった中で桑原さんは、ご自身は現在、Well-Beingの状態だと胸を張って断言してくださいました。すべてに満たされた生活を手に入れた桑原さんの、そこまでに至る経緯と実際の生活について詳しくお話しいただきました。

自然と向き合うことで得た、Well-Beingな人生


桑原さんは林業に従事して約二十年目。林業に携わる前までは実家の建設系の仕事をしていましたが、建物を立てる時点で図面があるというゴールが見えている状態が性に合わないと感じていたそうです。不確かなものを自分なりの答えを導き出す方が自分に向いていると気づき、林業の道へと進みました。

「基本的に楽観的なので、やめるとか諦めるということにネガティブな意味があるとは思っていません。林業は予測不可能なところが魅力的です。イメージはできるけど実際の完成形は分からない。50年後や100年後にどういった山にしたいかというイメージはあるけど実際にどういう山になるかはわかりませんからね。楽観的で周りの価値観を気にしない性格だったので林業という仕事と相性が良かったのだと思います。対山林、対自然という環境なので評価されるという部分もありません。なので人からの評価を気にしないのです。それよりも誰により良い環境を作れるかが重要だと思っています。自分の家族や子孫にどういった資産(自然)を残せるかというところに重きを置いて仕事をしています」

 

山の中で暮らし、山と共に育む『幸せ』

自然には人間の心身に与えるボジティブな効果があると語る桑原さん。
森林と共生して自然の中に生活基盤を構えたいと考えていた桑原さんは、不動産として整備された土地ではなく、未整備の山を買って家を建てました。

そんな桑原さんに、山の中で暮らし山ではたらく生活のリアルについて尋ねました。


なぜ山を購入して家を建てたのですか?
桑原さん:自然の中で自分の家族と生活すればいい影響を与えられると思ったからです。不動産として整備された土地を買うのよりも、未整備の山を買う方が1/10くらいの値段で購入できます。購入した3000平米のうち1/10を宅地にしました。残りは山林ですね。

山を買って家を建てることに好奇心を抱いたポイントは?
桑原さん:自然はこちらを評価せずに受け入れてくれます。そこに無限の可能性を感じました。山と家を行き来できるのも魅力の一つです。個人的にツリークライミングをやっているので、それができる環境が作れます。長い目で見れば自分の家族だけでなく地域の子供達にもそういう場を提供し、森林と関わることで幸福感を与えていきたいとも思っています。

このお家を作った時のこだわりやコンセプトは?
桑原さん:薪ストーブです。エネルギーとして省エネにもなり、コミュニケーションが取れる場にもなります。暖かい場所には人が集まりますし、ストーブに火をつける時も子供たちが興味津々で集まってくれます。家族が集まれる導線づくりにもこだわりました。

薪ストーブの設置は大変ですか?
桑原さん:初期設置代はかかると思いますが、田村市は70%弱が森林なので燃料は自分の労働次第でお金をかけなくても集められます。今の薪ストーブは優秀で、レンガで周りを囲まなくても熱が伝播しない作りになっています。薪も林業に携わってなくても誰でも割れるし、内勤が多い人は体を動かすいい機会になるのではないでしょうか。地方なら薪ストーブ設置は全く大変じゃないと思います。
(このイベントに参加してくれた人で)もし田村市に移住した際は、うちで出た端材を差し上げます。

他にこだわったポイントはありますか?
桑原さん:地下水を設置しました。実家が地下水だったので感覚的には地下水のほうが美味しいなと感じていました。それと災害時にインフラがダメになったときに、誰かに提供できるようになればいいなと考えました。
ボーリング工事をしてポンプで吸い上げているのですが、うちの場合は1m2万円くらいで掘ってもらいました。その代わり、その先の水道代はかかりません。使える量に制限がなく、自由を求める自分のライフスタイルにも合っていると思います。

自然の中での子育てで影響を与えているなと感じる点は?
桑原さん:私は20歳になるまで自然に対して無関心でした。そういう感謝を忘れていたという自己体験から、子供たちが自然に対して無関心になるような状況を作りたくないと思ったのです。子供たちには自分を否定しないような環境を作ってあげたいですね。家族は一番最初に集団生活をする場なので、親が肯定してくれるような環境がいいんじゃないかと思います。自分の生き方を一緒にやってみて、もしそれが子供達に合わなかったらまた子供たちと新しい生き方を見つけていきたいです。

木こりの仕事について教えてください
桑原さん:従業員は私の他に一人だけ。個人事業主の方にも手伝ってもらっています。大きな組織にはしたくないという考えが元からありました。組織という組織ではないほうが対等に話もでき、いい人間関係が作れると思います。自分でタイムマネジメントができるため、その分使える自由時間も調整できます。現代林業は機械化が進んでいるので、体力面できついこともあまりありません。ちゃんと知識と技術を身につければ高所での作業も怖くありませんし、独立すれば自分の働き方次第で賃金もアップし、リスク管理もできます。

副業として林業をできますか?
桑原さん:自伐型林業というのも一つの形態ですね。小さな山を買って持続的に管理していき、伐採した木材を販売することもできます。しかし、森林組合の下請けなどを請け負う場合は、週末だけでの林業というのは難しいかも。

幸せを感じる瞬間とは?
桑原さん:夜中に目が覚めたとき、子供たちの寝顔を見たときに「この子たちのために生きていける」と感じます。誰かのために生きていけるというこの感情はとても貴重だと思いました。若い頃には結婚しなくてもいいと思っていたので、新しい考えを与えてくれたことに感謝しています。でもだからといって、みんながみんな無理して結婚しなくてもいいと思うし、結婚してなくても幸せな人はいっぱいいます。無理に結婚してしまったらWell-Beingから遠ざかってしまいますしね。

 

自分軸で価値観を決めるのがWell-Beingのコツ


様々な団体で活動し、いろいろな価値観に触れたことで自分と向き合うようになった桑原さん。今後挑戦したいことを尋ねると、こう答えてくださいました。

「林業はなんでもチャレンジしやすい環境だと思います。業界的には進歩が遅いかもしれませんが、逆に言えば『自分のアイデアを実現しやすい仕事』です。今後は、あまり人がやったことのないことをしていきたいですね。地域の実家を継いでいく人たちと地域の話をしていくかも一つのテーマかと思います。そういう人たちには混じり気のない地域を思う気持ちを持っていたりしますから」

さらにWell-Beingな人生を送るための秘訣については、

「今は自分がやりたいことをやれる環境を作れています。周りの目を気にしないことがWell-Beingのコツです。嫌われたくない、こういう風に評価されたいという考えに固執するのではなく、世の中の価値基準を疑って自分の価値をきちんと理解してあげることが肝心だと思いますね」

と、語ってくださいました。

今回も多くの皆様にご参加いただきました。参加者からは、

・森と共存されている雰囲気を味わえました
・精神面のお話もしてくださったので、安心できました
・リアルな声が聴けて良かったです

とのご感想をいただきました。

12月23日(金)には現役地域おこし協力隊がお答えするオンライントークイベント
「福島のパイセン移住者とつながる 第3回 地域おこし協力隊のぶっちゃけ対談!地域の”あれこれ”を語る会」 を開催いたします。移住や地域おこし協力隊にご興味がある方はぜひご参加ください。

>>参加申込はこちら<<

たむら移住相談室では今後も、田舎での暮らしを満喫されている方や活躍する地域プレーヤーをゲストにお迎えしてオンラインイベントを行います。ぜひ今後の情報もチェックしてみてください。

たむらぐらし