和歌山県が、2018年4月から企画している起業・就農、就労の体験プログラムが 「わかやま しごと・暮らし体験」です。

利用者が希望する事業者のもとで「しごと」を体験しながら、周辺地域の先輩移住者や地域住民の方との交流を通じて「くらし」の体験を行い、移住後の生活をイメージすることができます。

体験費は無料です。今回はその“体験エピソード”をご紹介します。

体験者
櫻井 靖久さん
[兵庫県]→[和歌山県 紀の川市桃山町]


兵庫県出身。福社作業所での動務を経て、しごと・暮らし体験をきっかけに紀の川市へ移住。株式会社藤桃庵の一員として藪本さんとともに桃栽培にはげむ。釣りが好きで、時間があれば近所の川や海へ出かける日々。

体験先
薮本 周也さん|藤桃庵


桃栽培の盛んな紀の川市桃山町で、桃農園を営む農家の3代目。専業農家として桃栽培に打ち込みつつ、ジェラート屋も経営。傷ついた桃の有効活用、地域の雇用創出、編広い桃の魅力発信と、地域課題の解決にも尽力している。

 

「しごとくらし体験」に申し込んだ理由は?

櫻井
働いていた福祉作業所が閉まることになり、次の働く先を探していました。
どうせなら、海や川など自然が近い場所で暮らしたい、でも地元の兵庫県からそこまで遠くない場所がいい。

和歌山県はどちらの条件も満たす有力な候補地でした。

調べるうちに、わかやま移住定住支援センターの存在を知り、電話したらしごとくらし体験を教えていただいて。
仕事だけじゃなくて、移住前に現地の暮らしを知ることができると良いなあと思っていたので、これは!と思い、ホームページを見るようになりました。

体験先にこちらを選んだのはなぜですか?

櫻井
前職で一部農業に携わっていたこと、そして、小さい頃から祖父の農作業を手伝ったり、釣りに連れて行ってもらったり、自然に触れると元気になることを身体が覚えていたこともあり、転職するなら農業をしたい、という思いがありました。

ただ、人によってやり方が全然違うので、人も農作物も元気になる方法を実践している農家さんの話を聞いてみたかった。
しごとくらし体験のサイト内にある藤桃庵の紹介ページには、実はその点は詳しく書いていなかったんです。

でも、読んでいくうちに、周也さんの農業に対する姿勢が写真の雰囲気やページの行間から伝わってくるようで、ここだ!と申し込みを決めました。

薮本
うちを体験先に選んでくれる方は、農業に対して前向きで、よく動いてくれる方という印象があります。

櫻井くんもそのひとり。みなさん、軍手や長靴も持参で準備万端!という感じで、体験中も本当に楽しそうに作業してくれるので、私たちも楽しく受け入れています。

どんな体験をしましたか?体験の中で印象に残ったことは?

櫻井
伺った時は11月の農閑期だったので、桃の木周辺の草むしりや籾殻燻炭づくりなどを体験しました。

夜は地元のお好み焼き屋に連れて行ってもらって、周也さんや常連さんと交流できたのも楽しかったです。

特に印象に残ったことは、なんでもやってみよう!という周也さんの姿勢です。
元気がない桃の木に対して周也さんは、周りの雑草を手で引っこ抜いていく方法を取りました。

なんて手をかけて桃を栽培する人だろう!と感動したことを今でも覚えています。
この人と一緒に農業ができたら面白いんじゃないか、と思ったのもこの時でした。

薮本
普段から桃の木にとっていいことは何だろう?と考えながら実践しています。その核の部分に共感してくれたことは嬉しかったので覚えていますね。

体験者の皆さんがどんなことに興味を持っているか、私たちも作業の中で探り探りコミュニケーションをとっていくので、どんどん疑問に思ったことを聞いてくれる櫻井くんは受け入れやすかったです。
話していくうちに、人手が足りないという話も自然と出てきましたよね。

「しごとくらし体験」から移住までの経緯を教えてください。

櫻井
体験が終わってすぐ、ここで働きたい!と思ったんです。
人手が欲しいという話を周也さんがしてくれていたことも大きくて、もしかしたらと思っていました。

家に帰ってから2日後くらいに恐る恐る電話したら、前向きに考えてくれる旨の返事をもらえたので、その時には決意は固まっていました。

薮本
電話をもらった時は正直驚きましたが、体験で色々と感じてもらえたことがわかってうれしかったです。

私たちも「櫻井くんならいいかもね」と夫婦で話していて、両親が高齢で動けなくなってきたこともあり、タイミングもとてもよかったんです。「じゃあ、来てみる?」と話を進めていきました。

11月に体験をして、その後2~3回訪ねて、翌年の1月には家を借りました。入居したのは2月から。
地元の不動産屋さんとも意気投合して、トントンと家も決めることができて、なぜか、「この人たちと生きていく」という不思議な納得感があったんです。

 

移住後の暮らしはどうですか?

櫻井
移住して初めての農業繁忙期が始まるので、ちょっとドキドキしていますが、周也さんやお父さんの近くで農業ができて、毎日とても楽しいです。

今は桃の枝を支える杖をつける仕事をしています。

休みの日は、周也さんのご両親や近所の方に地元の保存食を教えてもらったり、念願だった釣りに思う存分出かけたり、仕事も遊びもとても充実しています。

しごとくらし体験の時に思い描いたような生活を、実際にできている感じです。あの時一歩を踏み出し、体験できたことは本当によかったです。

薮本
私たちにとっての日常が、彼にとっては新鮮なものに映っているようで、見ていてこちらも楽しいです。

私の家から自転車で5分くらいの場所に住んでいるので、公私ともに濃い付き合いが続いています。

とにかく祖父母から続いてきた農業を残したい。最初は自分だけで精一杯だったんです。
でも、人との出会いが少しずつ視野を広くしてくれて、地域の方々にも出会い直した気がします。
やっと地域のために何かしたいと思えて、こうして櫻井くんのような人が来てくれることは、本当に嬉しいです。

櫻井
僕も最後は人だなあと思っています。

こんなにピッタリとはまった感覚で移住することができて、これからも出会えることのありがたさを大事にしていけたらと思って和歌山暮らしを楽しんでいきます。

櫻井さんが体験された藤桃庵のしごと・暮らし体験は以下のページからお申し込み可能です。

熊野古道ワイナリープロジェクト|しごと・くらし体験

みなさまのご参加をお待ちしています。