ー他にも、村岡さんが影響を受けた人や言葉はありますか?

「その時々で、いろいろな人に影響を受けていると思いますが、事業家としていつも大事にしているのは、二宮尊徳の『道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は戯言である』という言葉です。理念のない稼ぎ方はやがて歪(ゆが)みをうむと思いますし、経済のない理想は戯言とまではいわないまでも、ビジネスはもちろん稼ぐことが必要です。自分の理想を追求して、それが利益に繋がって社会に循環するイメージを大事にしています。」

ー村岡さんの事業は、そもそも稼ぐことが関わる人たちを幸せにしていると感じます。例えば、九州パンケーキの売上があがるほど、農家さんたちは喜んでいます。そして、なおかつ稼いだ利益を地域で新たなビジネスをつくることに投資をしていますよね。

「いかに稼ぐか、というところでは、フードクリエイターとしての自分の軸を持っていたい。九州の素材を使って新たな価値をうみだす“作品”を作っている気持ちです。一方で、私自身の趣味でもあり関心事でもあるのが、地域の在り方(まちづくり)やコミュニティを思考するということなので、私が経営する限りは、弊社の稼ぎ方と、その事業を進める社会的理由は、表と裏の姿かもしれませんし一体なのかもしれません。」

具現化へのこだわり。”起こす人”への敬意。

ーどんなプロダクトを生み出したいですか?

全員、100%の人に好かれたい(笑)。そして同時に、1%の人が熱狂できるプロダクトを作りたいです。九州には1300万人が住んでいます。その1%である13万人が熱狂するものであれば、自然と広がりが生まれます。」

ー村岡さんがご自身のことを「事業家」と名乗るとき、強い決意を感じるのですが、村岡さんにとって事業家とは?

「ビジネスモデルを進化させつつ具現化できるスキルだと思います。概念を現象にして、リアリティのあるものに具現化していく。一つの持続可能なビジネスにしていく人、その能力だと。『こうしたい、ああしたい』と想像して表現するのがクリエイターだとしたら、それを稼げる事業構想として、如何にビジネスにするかを構築していくのが事業家です。」

ー「九州バカ」を拝読して、村岡さんがどうして地域の若い人たちのチャレンジを本気で応援し、そして失敗したとしてもあたたかい眼差しで見守ってくださるのか理由がわかった気がします。

「『世界とつながる地元創生起業論』と副題をつけましたが、起業することだけが全てだとは思っていません。チャレンジはどんな小さなことでも同じです。自分のやりたいことを始めてみるとか、お祭りを開催するためにクラウドファンディングにチャレンジするとか、0から1を生み出す人を、総じて“起こす”という勇気に敬意を評していたいと思います。そんな人たちが集まる九州全域に広がりのある広域なコミュニティを創ってみたい。その人たちを育てるというよりは、自分自身もその中にダイブしていたいと思っています。そうすると、結果として『九州、おもしろい!』となると思います。」


 たしかに、村岡さんは「実際にチャレンジする姿を見せ続ける人」なのです。年齢や立場に関係なく、人を応援するから応援される。シンプルだけれど、年齢を重ねるほどに難しくなることでもあると感じました。

 また、村岡さんのフットワークの軽さも特筆すべき点です。九州パンケーキの素材を集めるときはもちろん、今でも生産者の顔をみてコミュニケーションをとるために九州中を走り回ります。そんな人との関係づくりを、丁寧に、地道にやり続けることが村岡さんの理想を形にしていく最大の鍵でもあると感じました。

※8/13公開の「世界が憧れる九州をつくる。九州パンケーキ の成功から始まるリージョナルブランド戦略」も合わせてお読みください!

●有限会社一平 会社概要

  • 代表取締役 : 村岡浩司
  • 設  立 : 1996年9月
  • 所在地 : 〒880-0865 宮崎県宮崎市松山1丁目8-8
  • 資本金 : 13,000千円
  • メール : nfo@kyushu-pancake.jp
  • 九州パンケーキ ウェブサイト

著者 長友まさ美(宮崎てげてげ通信(テゲツー!)会長


「人と人を繋げ、宮崎を豊かにする」ことを使命に、本当におすすめの宮崎情報や魅力を伝えるローカルメディア「テゲツー!」の立ち上げ、運営を行う。執筆方針は、愛とノリ。取材・執筆・情報発信、チャレンジをうみだす場づくりなどを行う。得意領域は、「つなぐ、つたえる、まきこむ」ことで共創をうみだすこと。本当にありたい地域の未来のために、今できることをコツコツはじめ、積み重ねている。