ものづくりのまち【石川県小松市】で、居住空間を彩る木製品を楽しむ

北陸、石川県にある小松市は東京・大阪・名古屋の３大都市圏からほぼ等距離に位置する、人口約10万人の地方都市。市内には日本海側最大の小松空港があり、国内線と国際線が就航している。さらに地上にはJR特急列車が停車する駅があり、2024年には北陸新幹線の駅も開業予定の、アクセス抜群の町だ。

市内はクルマで30分圏内の身近さに海、山などの自然はもちろん、ショッピングモールや学校、図書館、病院、子どもたちの遊ぶ施設も多い。全国的に見ても、安心・快適・利便など全ての指標のバランスがよい、優れたまちとして評価され「住み良さランキング」で全国8位を獲得（出典：東洋経済新報社「都市データパック2020年版」）。「多様な働き方が可能な都市」として第1位にも選ばれた（日本経済新聞と東京大学の2021年調査結果）。テレワークや二拠点生活にも適した、住みやすいまちと評価が高い。

2024年春には北陸新幹線の駅が開業。金沢まで約7分の距離

今では世界的な建設機械メーカーも生まれ、小松市は「ものづくり」の町でもある。もともと加賀前田家三代利常公の殖産興業政策で職人が集まり、「ものづくり」をなりわいとして繁栄してきた。ものが生まれる「原場（ゲンバ）」を見ることができるオープンファクトリーイベントを年に一度開くなど、市民がものづくりを身近に感じられる機会も多い。

木に向き合って61年

ヤマウチ産業は、小松市にある木製家具、建具、パネル製作・施工を行う会社だ。1989年に創業し木製専門の職人が多い。工場内をみせてもらうと、30代の女性職人から年配の男性まで実に幅広い。女性でも大きな機械を扱いながら、丁寧に製品を仕上げていく。

「男女関係なく、同じことをします。力仕事や、多少汚れる仕事もありますが、みんな楽しいと言いながら働いてますね。みんな、ものを作るのが好きという集団なので、工場内でも生き生きしてますよ」と総務の山内美千代さん。

国の実技検定などにも果敢に挑戦する職人も多いという。ものづくりへの探求心と好き、という気持ちにブレがないのがヤマウチ産業の職人なのだろう。

小松空港からもクルマで10分程の小松市串茶屋町にあるヤマウチ産業

右は総務の山内美千代さん、左はまるや工房を担当する山内樹さん

そんな職人たちが働く今の工場の場所とは別に、大切な創業地があるという。その土地が何年か放置されたままとなっており、そんな思い出の場所も活かしたいとの想いで、一般の人も使えるDIYレンタルスペース「まるや工房」を2022年に新設した。

自分のものづくり

まるや工房は、木材を使って何かを作りたい人が、1時間または4時間などの時間制でお金を支払い、工房内の木材や工具などが使い放題となる仕組みだ。常時スタッフがいるのでちょっとした質問にも丁寧に答えてくれ、半日だけでなく何日か通い詰めて作品を完成させる人もいるとか。

まるや工房の入り口にある料金看板。手軽に利用できるのが嬉しい

クルマ通りも多い通りに目立つ、シックな緑の外観のまるや工房

職人たちが普段使用するプロの道具が使い放題

「作りたいものが明確で、1人で来られる人もいます。夏休みなどには親子でものづくりに来られる方もいらっしゃいます」と教えてくれたのは、山内樹さん。

家具や建具を造る工程では、どうしても廃材が大量に発生する。大きな焼却炉でそれらを処分していたが、その一部を一般の方が喜んで使用するメリットは大きい。企業的にはゴミでも、ちょっとした木工品を作りたい、DIY好きな人間にとっては貴重な資材。まさに今の時代のSDGｓから派生した新しい事業。Instagramなどの発信にも力を入れており、作品の数々を動画で紹介しているのを見ると、同じようなものを作ってみたい、とわくわくしてくる。

小さな木材であれこれ作る子どもたちも多い

山内樹さんが手掛ける作品にはこんなものも！

まるや工房があるからこそ、そこが窓口となりヤマウチ産業を知ったという地元の人も多い。町内の子どもたちがみんなで思い出に制作をしたり、それを聞いた親が今度は家族で作りに来たりなど波及効果も高い。皆、自分の手で特別な移住空間を作り出しているのだ。

人と人がつながる小松

交通の便がよいことや、四季の移り変わりが美しい小松市。イベントも多く、楽しめる施設が身近にある魅力に加えて、この地に長く住む山内美千代さんがおっしゃったのはこんなことだった。「小松は、人と人とのつながりが強いですね」

誰かと何かの話をしていて、そういえばそれはあの人のことだった、家だった、企業だった、などいうことが非常に多いそう。それは、それだけ長く地元に住んでいる人が多いということ。進学や就職で一度は小松を離れることがあっても、その後に戻ってくる人が多いのか、人との付き合いは浅くとも深くとも、とにかく長く続いてゆく。

「それだけここで育った人たちは、小松が好きなんでしょうね。若い子たちでも喜んで帰ってきます」と山内さんは笑う。なんと実際に、山内家の長女夫婦も小松に戻ってくることを検討しているという。

「長女の夫は生まれも育ちも東京なのに、結婚してこっちに時々来るようになってから、本当に小松が大好きになっちゃって。小松はゴルフ場にもすぐ行けるし、空気も食事もおいしい。東京の仕事ですが、完全リモートですし。月に1回は出社があってもこれから新幹線もできるし何の問題もないよねって」

仕事に影響が出ないのは決断もしやすい。実際に今住む横浜の家を手放して、小松で再び家を建てることを計画しているという。きっとその家も、ヤマウチ産業が作り出す、木のぬくもり溢れる空間になるのだろう。

小松で新しい生活を始める、という人にも、その空間を自身の手で創り出すという魅力をぜひ「まるや工房」で作って楽しんで欲しい。

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