富良野ワーケーションでは、自然豊かな北海道富良野市を舞台にした、ニューノーマル時代の新しい働き方・過ごし方を情報発信していきます。
その第1弾として、株式会社リコー(東京本社)とNPO法人富良野自然塾が共同で提案し、「新たな旅のスタイル促進事業」(観光庁)のモデル事業に採択されたワーケーションについて紹介します。多くの企業が新しい働き方を模索しているなかで、今回の実証実験はまさにその大きなトライアルであり、ひとつのモデルを示すものとなりました。

リコーの社員たちが富良野に集まり、ワーケーションを体験

仕事をしながら多様な視点について学ぶ「旅」

実証実験を行ったのは、2021年11月のことです。2回にわたってそれぞれ6名、計12名が参加しました。コンセプトは「自然の中で、視点を変える」旅。リモートワークをしながらさまざまな視点について学ぶために、多彩なプログラムを用意しました。
ちなみに、当初は2022年1月に3回目を予定していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大により断念。参加できなかった皆さんは、ぜひ、次の機会にお越しいただきたいです。

自然の中で語り合うことで、いろいろな発見や気づきも

富良野自然塾が活動の柱のひとつとしているのが、環境教育事業です。
環境教育プログラムでは、地球46億年の歴史を460メートルの距離に置き換えた道をたどりながら、生命の歴史の長さと人類の歴史の長さの対比を感覚的に学びました。人間活動にとって水や空気はなくてはならないものですが、当たり前すぎて忘れがちです。そうしたことを地球環境の原点から学び、今後の企業活動や持続可能な社会の実現に向けてやるべきことを考えました。

入社2年目の皆さんはまだ若く、地球レベルで物事をとらえる経験が初めてという人も多かったのではないでしょうか。それだけに、このプログラムはずっしりと心に響いたようです。

富良野演劇工場でのコミュニケーションワークショップの様子

また、NPO法人ふらの演劇工房が担当したコミュニケーションワークショップでは、演劇的手法を通して自分と相手の視点の違いを学びました。
富良野自然塾の主宰はテレビドラマ『北の国から』で知られる脚本家の倉本聰氏です。富良野にはその指導を受けた現役の役者たちが多く在籍しています。

複雑な社会問題の解決のためにはパートナーシップを組むことが大切であり、そのためにはコミュニケーションスキルが欠かせません。他者の視点に思いをはせることは、社会人として重要な資質なのです。

実証実験では、ほかにも高校生との交流、農業体験、地元の方々との意見交換会、植樹体験を通して、それぞれ「大人と若者」「消費者と生産者」「中央と地方」「現在と未来」といった視点について学びました。まさに「自然の中で、視点を変える」ということを、3泊4日の行程でたっぷりと体験しました。

北海道富良野緑峰高等学校で行った特別授業でのひとコマ

ワーケーションを体験した若手社員たちの声

実証実験に参加したリコーの社員たちからは、「参加してよかった」という感想が多く聞かれました。仕事がしやすいだけでなく、期間中、コロナ禍で親睦を図るのが難しかった同期メンバーとしっかり交流ができたことも、大きな「収穫」でした。一緒に森を歩いたり、星空を眺めたりする時間を共有することで、関係性がぐっと深まったのです。ここでは、そんな社員の喜び・感動の声をいくつか紹介します。

焚火を囲んでのひととき。同期との親睦が深まった

大自然の中で気持ちよくリモートワークができました。ホテルの部屋ではテレビとパソコンをつないでミーティングなどを、眺めのよいワーキングスペースではパソコンだけでできる作業をしました。そうすることでメリハリがつき、普段より集中力が高まりました。

環境教育プログラムでは、さまざまな生き物たちの命、地球スケールでの時の流れといったものを五感で感じることができました。また、相手の視点に立って想像力を働かせることで、それまで見過ごしていた問題を自分ごととしてとらえられるということも学びました。

温かく迎えてくださった富良野の皆さんと交流を深めることで、より濃い充実した日々を過ごすことができました。話し手と受け手、都会と地方、消費者と生産者など、視点の違いを意識する場面もしばしばあり、多角的な視点を持つことの大切さを知りました。

さまざまなプログラムを通して、同期入社メンバーとの関係性も深まっていきました。最初はうまくできるか不安もありましたが、最後にはかなり自分の素が出せるようになりました。今後もこのつながりは大切にしていきたいです。本当に最高のワーケーションでした。

こうした社員の声からも、それぞれが「かけがえのないもの」を得たことがわかります。富良野で得たものは一人ひとりの成長の糧となり、ここで育まれたコミュニケーションは次の仕事でよりよいチームワークにつながっていくに違いありません。

「地球は子孫から借りているもの」というメッセージをより多くの人に

森づくり事業、そして自然体験プログラム事業を展開する富良野自然塾では、2006年の設立以来、学校教育などに多く活用されてきました。五感を使い、地球環境について考えることを目的としたプログラムの参加者は、5万人を超えています。近年は企業研修のニーズも増えており、合宿型のワーケーションに環境教育プログラムを組み込むことで、「地球は子孫から借りているもの」という大切なメッセージをより多くの人に届けたいと考えています。

閉鎖されたゴルフ場の跡地を森林に戻すための植樹活動

塾長はテレビドラマ『北の国から』などで知られる脚本家の倉本聰氏

倉本氏の自然に対する考えに共鳴し、静岡から富良野に移住したプロジェクトマネージャーの中島吾郎さんは、富良野の魅力についてこう話します。

「なんといっても、十勝岳や富良野盆地など、北海道ならではの開放感がまずは大きな魅力でしょう。実証実験でもそうした雄大な景色を見ながらミーティングができる、というような場の提供を心がけました。また、自然だけでなく、農業に携わる生産者の皆さん、現役の役者たちなど、創作的な『人』との交流も富良野の特色だと思います。このまちの雰囲気、『創る』ということを実践している人たちとの出会いを通して得られるものも多いはずです」

ドラマのロケ地やラベンダー畑などで知られる富良野は、もともと魅力あふれる観光地ですが、今回の実証実験をきっかけに、従来の観光とは違うワーケーションという形で関係人口を増やしていきたいと中島さんは続けます。

「たくさんの方に自然体験プログラムを提供できればと思います。ラベンダーとスキーの季節を除けば、比較的のんびりと滞在できますので、ぜひ四季折々の富良野を感じていただければ。富良野自然塾としては、この取り組みを事業として定着させることで、私たちのメッセージが広く浸透するとともに、地域振興にも少なからず貢献できるのではないかと考えています」

富良野市・北猛俊市長からのメッセージ

「もっと多くの方に富良野のファンになっていただきたい」。そんな思いで、働き方の変化に合わせたテレワークやワーケーションの環境づくりを進めてきました。
今回の実証実験では、リコーの社員の皆さんから、富良野の自然、人、文化などから多くの感動を得たという声が寄せられました。「富良野にはこんなにも喜んでいただけるものがあったのだ」と、私たちもあらためて気づかせてもらいました。

富良野といえばテレビドラマ『北の国から』を思い浮かべる方も多いでしょう。
あの作品が語りかけるものは、市民の間に根づいているように思います。だからこそ、愛情、自然に対する優しさといったものを、富良野に来た方々は感じられるのではないでしょうか。
富良野に来ることで仕事の仕方が変わるだけでなく、生活に対する考え方や人生観も変わるかもしれません。今後ともそういうよい影響を多くの方に与えられるよう、民間の皆さんと力を合わせて「共創」のまちづくりに努めてまいります。

ぜひ、富良野にお越しください。そして多くの感想をお寄せください。そこでの「気づき」が、富良野の魅力をさらに磨き上げていくことになります。

<富良野自然塾>
https://furano-shizenjuku.com/

<お問い合わせ>
SMBC環境プログラム NPO法人C・C・C富良野自然塾
TEL 0167-22-4019
MAIL shizenjuku@furano.ne.jp

<関連サイト>
富良野・研修・ワーケーション

https://www.furano-kenshu.com/