「商品として藍染め暖簾を卸した居酒屋に県外の方と一緒に行くと、『この暖簾をみたら徳島に来たな!って実感する』」と言われ、県民として誇らしく、なんだか嬉しい気分になっちゃってついつい「もう一杯!」なんてこともしばしば」と語るのは代表の根本ちとせさん(58)。
鳴門市小桑島にある古民家を改装して作られた「STUDIO N2(スタジオエヌツー)」には、阿波藍正藍染めのムラクモ染めTシャツやトートバッグ、スカーフやハンカチといった定番モノのほか、サイクルキャップやブックカバー、箸袋、ぬいぐるみといった贈り物に嬉しい商品まで品良く陳列されています。どの商品にも共通して言えるのが「阿波藍を使った高品質」で「デザイン性が高い」ということ。

「2人ともイタリアで13年間、ファッションデザインの仕事に携わっていました。『藍染め』と聞けば伝統工芸品のイメージがありますが、伝統的な藍染めの技術とファッションをつなげられる本当に美しい商品、本物を自分たちの手でつくり届けたい――と令和元年にこの店舗兼工房を鳴門市に開業したんです」

 

デザイナーとしてちとせさんを支える夫の弘之さん(58)も「少しでも良いものをつくろうと日々精進を重ねる『クラフトマンシップ』がミラノのファッション界を支えていることに感動しました」と言います。日本に帰国後、阿波藍と出会ったお2人のなかに阿波の職人魂が宿ったのは必然かも知れません。世の中に流通している藍製品のほとんどが石炭由来の合成藍でつくられたもので、天然藍で染められたものはごくわずか。日の光を浴びたときに、その表情を変える天然藍独特の青色の美しさに加え、抗菌・防臭といった機能や肌への優しさ、そして歴史を奏でるストーリーが天然藍の魅力、と口を揃えます。

 

同社では、アパレル業界で長年勤務された経験から得た、デザイン・パターン・縫製品質管理を含めた企画開発力という同業他社にない強みをもっており、スポーツウェアに取り入れたスポーツカジュアルウェアブランド『NARUTO AZZURRO』、レディースのリラクシングウェアブランド『soumei』を展開中のほか、他社のコラボ商品についての相談も多くあるとのことです。

 

店舗奥の工房には地元の陶芸家が制作した大谷焼の藍甕(あいがめ/染料の藍汁をためておくかめ)が2つ構えられており、観光客向けにTシャツやハンカチ等を染められる「藍染め体験」やワークショップも行われています。藍染め体験は徳島県産阿波藍を灰汁のみで発酵建てした染料を使用した「正藍染」という伝統的な技法で染められるということもあり、関東圏の方を中心に20代~40代のカップル・ファミリーに大変人気です。

 

「『サスティナブル』という言葉は自然由来の成分を使って染めをしている私たちには大きなキーワードです。伝統産業として守り続けること、仕事として藍染業を続けていくこと、そして限られた資源を大切に使うことというのは特に意識していて、藍を作る農家が減ってきた昨今、染料を買い、商品を作るだけではなかなか立ち行かない現状に向き合っているところです」

STUDIO N2では昨年から原料である「藍」を畑作りから始め、量産商品にも対応できる「沈殿法」という製造法で藍の染料作りに令和3年からチャレンジしています。
藍染めで一般的に使われる伝統染料の「すくも」はタデ藍の葉を乾燥させてから打ち水をして発酵させつくる固形の染料ですが、STUDIO N2が取り組んでいるのは藍の生葉を水に浸け自然発酵させ、抽出した水溶液に石灰を入れ反応させて藍成分を沈殿させる「沈殿藍」の製造です。ペースト状の泥藍は乾燥させることで粉末にすることができ、量産商品の染色用染料として使用も可能になります。日本では「琉球藍」や「あおもり藍」も同じ方法での藍染料づくりが有名ですが、「すくも」と「沈殿藍」はそれぞれに良いところがあるそうです。

 

「畑で藍を育て、収穫し、そしてまた今年植えて。そんな経験を通じて気付いたのが『藍染めって究極のサスティナブルだな』と。染料の製造過程で出てしまう石灰水などの廃液や残渣もまた畑に戻し、肥料や土壌改良のために使用することができます。自然から生まれ、自然に還る――何も無駄がでないんです。面白いですよね。サスティナブルという言葉がファッション化しつつありますが、私たちは有機栽培にこだわり、“本物”のサスティナブル、藍染めを追求し、発信していきたいと思います」

 

 

【企業情報】
企業名:STUDIO N2(スタジオエヌツー)
住 所:鳴門市撫養町小桑島字日向谷80
設 立:令和元年5月1日
業 種:繊維工業/織物・衣服・身の回り品小売業/農業/その他の生活関連サービス業

【お問合せ】
TEL:090-7787-7610
MAIL:studio@entwo.com
URL:https://www.entwo.com

 

 

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