この秋、移住・関係人口促進のためのWebサービス「SMOUT(スマウト)」は紀伊半島の三重・奈良・和歌山の3県で、新しい暮らし方・働き方・関わり方を見つけるためのプログラム「紀伊半島 NEW ReLATIONプログラム」を開催します。

メインとなるのは、7日間の現地をめぐりながら地域との関係性を築く3つのコース。参加者が地域で次世代のプレイヤーへと成長してくれることを目指すプログラムです。

このプログラムでは、すでに紀伊半島に関わっている3名の地域の先輩が参加者に伴走して、現地の課題に向き合うフィールドワークを行います。参加者は先輩の助けを借りながら「自分が地域にできること」に対する解像度を上げていくことができます。

このプログラムのキックオフイベントがオンラインで10月19日に行われ、地域の先輩3人がそれぞれゲストを迎えて地域との関わり合いについてお話しいただきました。今回は、キックオフイベントの様子をお伝えします。

ウェルビーイング体験で地域との関わりを発見する

Aコースの「ウェルビーイング体験で地域との関わりを発見する7日間<奈良→和歌山>」は、日常から離れて自然の中で今この瞬間に意識を集中する「リトリート」により、参加者のウェルビーイングを高めるプログラムです。

梅干し作業_trim-1和歌山県みなべ町(提供:和歌山県観光連盟フォトライブラリー)

地域のプレイヤーとの対話や内省の時間を通じて、自分のキャリアを見つめ直し、地域と関わる可能性を探ります。伴走してくれる地域の先輩は、日本企業や社会のウェルビーイングリテラシー向上に長年貢献し続けている元ユニリーバ・ジャパン取締役人事総務本部長で、株式会社YeeY共同創業者/代表取締役の島田由香さんです。

image1_1697040342和歌山県の先輩:島田由香さん(株式会社YeeY共同創業者/代表取締役)

島田さんは東京と和歌山県みなべ町に拠点を構え、トークゲストの佐宗邦威さんは東京から軽井沢へと移住し二拠点生活を送っています。ともに多拠点生活を送るお二人にとって、地域とはどのようなものでしょうか。

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佐宗邦威さん(株式会社BIOTOPE CEO/チーフ・ストラテジック・デザイナー、多摩美術大学 特任准教授)

島田さん「私は和歌山県に魅力を感じて住まいを購入し、先月には住民票も移しました。佐宗さんは、どうして軽井沢に移住しようと思ったんですか?」

佐宗さん「移住を考えた理由は2つありまして、1つはコロナ禍にこれからのライフスタイルを考え直して、それまで東京でずっと働き詰めで、モア&モアをやり続ける生活に限界を感じたことです。自分のペースで、競争を過度に意識せずに過ごせる環境で、自分の心の豊かさを取り戻したいと思ったことが背景にあります。もう1つは、子どもが当時5歳で、これからの子育てを考えて自然の豊かな場所にいることが重要だと思ったことです。それで移住しようとなったのですが、場所については、妻が軽井沢に住んでみたいと言った一言で決まりました。」

島田さん「自分だけでなく家族も含めてのウェルビーイングのために軽井沢の移住があったということですね。じつは私も、コロナが大きなきっかけです。ずっと家で仕事してすることになって、気づいたら家のベランダが観葉植物だらけになっていたんです。無意識に自然を目に見える範囲に求めていることがわかって、それで自身のウェルビーイングが下がっていることに気が付きました。思い切って場所を変えて仕事をしようと、南紀白浜に行ったところ、海を見ながら仕事できることに感動して。すごく集中できたんです。飛行機なら東京から1時間ほどで行けるし、こんなに近くて、こんなに綺麗で、 こんなに便利で、仕事もできまくるじゃん、と思ったのがきっかけです。」

佐宗さん「初めて行った時に、もしかしたら自分将来ここ住みたいかもって思われたんですか。」

島田さん「その時は全然思っていなかったんですが、通ううちに地域の方との繋がりができて、この山と海と時間の流れは、私のウェルビーングを本当にあげてくれているし、自分の居場所がここにあるなと感じて、『ここに住んでもいいな』とポロっと言ったら、地域の方が『こんなおうちあるけど』と教えてくださって、見に行って『買います!』となったんです。」

佐宗さん「僕は最初の1年間は賃貸に住んで、東京の家を残して移住したんですけど、2年目に東京の家を引き払って、3年目に家を建ててというように、少しずつ東京から本拠を移して、今は週2で東京に通いつつ軽井沢で過ごすというバランスになっています。そうやって自分の中でセロトニンとドーパミンのバランスを取っているんですが、島田さんはライフスタイルのバランスはどう考えてらっしゃいますか。」

島田さん「私は、なんとなく月の3分の2は和歌山に限らず地域に行くみたいなバランスです。2日東京にいたら、次の1週間で地域を3か所回る、みたいな。私にとってはそれくらい自然にふれることが大事なんです。地域にいる時のほうが世の中に貢献できている感覚を持てるし、自分を感じられるんです。」

佐宗さん「島田さんは新しい働き方を見せてきた人だと思うんですが、これからの豊かさは地域にある、未来は地域にあるとおっしゃっているのが、すごく興味深いなと思って。地域のほうがいいと思うようになったのは、なぜですか。」

島田さん「自然があるのはもちろんですが、やっぱり人間ですね。そこにいらっしゃる人の生きる力の強さとか、知識とかスキルではなく、存在からエネルギーを感じるとか、その人がいるだけで場が熱くなるとか、人間としてのあり方を地域の方にはものすごく感じるんです。

おっしゃってくださったように未来は地域にあると思っていますが、東京がダメだと言いたいのではなくて、両方を経験することがこれからとても大事になると思います。佐宗さんの『週2日は東京』みたいに、戦略的に自分のウェルビーイングを整える方法を知っていることが大切なんです。だから、今回のツアーでも、新しい働き方、暮らし、関わり方を7日間で知ってもらって、紀伊半島の魅力を感じてもらって、自分のウェルビーイングに向き合ってもらえたらと思います。

みなべ町の私の家でバーベキューも予定しています!近所の方とか、農家さんも来てくれるので、地域の人たちのエネルギーも感じてみてほしいです。」

佐宗さん「移住先を考える上でも、そこに暮らしている人の家に行くのは、生活がイメージできるのでいいですよね。それに、地域のキーマンやコミュニティとの出会いもすごく重要だと思うので、今回のツアーでそんな出会いが生まれればいいですね。いきなり地縁のないところに移住するのはやはり厳しいので、まずは人の縁からつくるのがいいと思います。」

島田さん「人ですよね。移住先を探すときは、この人が言うところだったら行ってみようかなと思った場所に赴いてみることを繰り返すといいんじゃないかと思います。今回は私のおすすめの場所を、ぜひ体験してみてほしいです。」

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