福島県浜通りの中央に位置する富岡町は、東日本大震災と原子力災害により全町避難を経験した町。2017年の避難指示解除以降、ゼロからのまちづくりに取り組んでいます。
そんな富岡町で物流を通して地域の暮らしを支える事業を展開しているのが株式会社宮田運輸(以下、宮田運輸)です。 2023年に富岡産業団地に新社屋を開設し、2024年9月現在、大型トラックの運転手や、大型特殊免許を持っていなくても活躍できる職種で人材を募集しています。
町の課題を知り、富岡産業団地へ
提案を手掛ける物流会社です。福島事業所を立ち上げたのは2019年のこと。除染作業で出た土壌の運搬業務へのオファーがきっかけでした。立ち上げから関わっているのが、京都府出身で支援部企画開発室・室長の建野成恒さんです。
「浜通りのある企業から『除染作業した後に出る除去土壌を運ぶ車両が足りないから、手伝ってくれないか?』 と声をかけられて『困っておられるならやるか!』と当時の社長が即答したことがはじまりなんです」
とはいえ、宮田運輸は商品を運ぶ業務が主であるため、土壌の運搬は経験したことがありません。建設業に使用される大型ダンプを5台購入するところからのチャレンジングなスタートでした。2019年7月、声をかけてくれた企業の敷地内に福島事務所を立ち上げた当初は、本社から派遣された2名と現地採用3名で運搬事業を行ったそうです。
そんなある日、富岡町役場の職員が会社を訪ねてきました。これから造成する富岡産業団地への進出の打診でした。
「最初はどうやって断ろうかと思いながら話を聞いていたんです。だって運送事業を行うにしても、ある程度の荷量がないと立ち行かなくなる。いずれ福島に拠点を構えるにしても、事業者の多いいわき市あたりを想定していました」
しかし、話に来た職員2人がものすごい熱量でこの町が抱える課題を話し始めたのです。
1つ目は、この地域に大型の荷物を取り扱う事業者がおらず、輸送インフラが整わないことが復興・再生の大きなボトルネックになっていること。2つ目は、宅配便のサイズを超える荷物を運ぶ「路線便」がないこと。一般家庭への配送であれば問題ありませんが、企業が注文するような大きな製品は配達できないため、注文企業が自らいわき市や郡山市まで取りに行かなければならなかったのです。
「町を発展させていくためには輸送インフラの整備が必須ですが、この町はまだまだ整っていなかった。要はめっちゃ困っていて、そのためになんとか力を貸してくださいっていうわけなんです。その時僕は、この地域が抱える課題に初めて触れた気がしました」
翌日、ちょうど出張で福島に来た宮田社長と当時の専務に「町からこんな話があったけどどうする?」と伝えると、すぐに産業団地を見に行くことになりました。丘の上から、まだ何もない真っさらな土地を見て「困っている人たちがいるなら、やってみるか!」と宮田社長が言ったそうです。
「隣にいる専務もまんざらでもない顔をしてるんですよ。でもね、会社って全員でアクセル踏んだら危ないでしょう。だから僕はブレーキの役目で『経営的に本当に大丈夫か?』と聞いたんです。そしたら『人との繋がりを大事にしてたら、事業は自然とうまいこと行くから大丈夫や!』って。その言葉に妙に納得してしまったんですよね(笑)」
そして2023年8月、富岡産業団地の敷地面積7,700坪に新社屋と倉庫が完成しました。同時に単身者用6室、ファミリー用2室、平屋1戸建て1つの社員寮も建設。大阪と富岡町を行き来していた建野さんも移住しました。
物流で地域を支えていきたい
現在、宮田運輸では、富岡町に拠点を置くメーカーが製造する製品の保管や輸送を行っています。また、富岡町内の企業間物流も担っており、浜通りの輸送インフラに大きく貢献しています。さらに経済産業省と協議を重ね、他社と連携することで、2024年4月に大熊町、双葉町、浪江町に路線便を開通させました。地域に根ざした業務にも熱心に取り組んでいます。浪江町の給食センターから大熊町立学び舎ゆめの森へ給食を運ぶのも、宮田運輸の大切な業務のひとつです。
建野さんは、物流で地域に貢献したいと話します。「まだ僕の構想段階ですが、もっと小回りがきくようなサービスもしたいんです。例えば、食品デリバリーのようなことをしながらお年寄りの見回りをするとか。『最近、あのおばあちゃんから注文ないけど風邪ひいてんとちゃうか?』ってね。僕らがここでやりたいことは、ただAからBへ無機質に物を運ぶのではなく、地域がちょっと良くなるために物流で役立つことなんです」。
現在、福島事業所の従業員は14名。県外からの移住者は寮暮らしをしています。寮では共同の畑で野菜を育てたり、休日はバーベキューをしたりと、シェアハウスのような感覚で過ごすことが多いのだとか。「夕方になると『今からちょっと肉でも焼こうか〜!』って言ってみんなで集まってワイワイやっていますよ」と建野さん。
そんな建野さんに地域の魅力を伺うと、「人」だと教えてくれました。「僕らがここを好きになれたのも、ここで事業を継続できているのも、地域の方たちが応援してくれているからなんです。だから僕たちも、少しでも地域の方たちが喜んでくれる仕事をしようと頑張れるんですよね」と笑います。
人を大切にすることで生まれる好循環
採用を担当している、所長の竹田敏徳さんにもお話を伺いました。兵庫県出身の竹田さんは18歳からこの業界に携わってきた運送業のプロ。2020年3月に宮田運輸に入社し、福島事業所へ赴任しました。何社も運送会社を見てきた竹田さんですが、宮田運輸の徹底した人を大切にする姿勢に驚いていると話します。
「宮田運輸には、お客様を大切にすることはもちろん『社員とその家族も守りたい』という、創業当初からのモットーがあります。そのため、本社から従業員や家族を大切にしなさいとい言われることが多いんです。1分1秒でも早く遠くへ、1円でも安くというような会社もあるなかで、これだけ人を大切にしてくれる会社は見たことがありません。ここで働けることに喜びを感じますし、日々学んでいます」
物流というと、物を運ぶだけの仕事だと思われがちです。しかし、物を運ぶことで人と人を繋ぎ、地域の暮らしを支える役割があると竹田さんは言います。
宮田運輸の人を大切にする思いは、従業員やその家族だけではなく、地域でも表現されています。ドライバーの子どもたちの絵をトラックのボディにラッピングし、安全運転に努めようという「こどもミュージアムプロジェクト」がその一つです。
「もともとは交通事故をなくすためにはじめたプロジェクトです。ドライバーは子どもたちの絵を大切にするために自然と運転が丁寧になりますし、周りを走る車も気をつけようって気持ちになるでしょう」と建野さん。福島事業所管内では、富岡町立富岡小学校の子どもたちが描いてくれた絵をラッピングしたトラックが走っています。建野さんは「震災を経て今を生きる子どもたちが、夢や希望を持って成長してくれることを願って、地域の皆さんとともに町を盛り上げていきたい」と話します。
宮田運輸では、地域を支える業務を繋げていくために人材を求めています。ドライバーのほか、未経験可の配車担当者も募集しており、宮田運輸の理念に共感する人にも門戸が開かれています。県外から移住して就職する方には、家族での転居相談、引越し費用や敷金礼金を負担するなど、手厚いサポートが用意されているのだそうです。
地域に寄り添いながら事業を展開する宮田運輸の取り組みは、復興を超えて、新しい地域づくりのモデルとなることでしょう。運送業に興味のある人はぜひ、まちづくりに大きく貢献できる宮田運輸の仕事にチャレンジしてみませんか。
宮田運輸の詳しい求人情報はこちらのページでご確認ください。
>https://arwrk.net/recruit/miyata-unyu
■株式会社 宮田運輸
大阪府高槻市に本社を置く1967年創業の物流会社。運送、倉庫管理、共同配送、物流コンサルティング、物流システム提案を手掛ける。2019年に除染作業における土壌運搬業務のため福島事業所を設立。2023年、富岡産業団地の敷地面積7,700坪に新社屋と倉庫が完成。現在は土壌運搬業務を終了し、浜通り地域で集配送業務や倉庫管理などの地域に根ざした業務を行っている。
所在地:〒979-1131 福島県双葉郡富岡町上郡山関名古144-38
TEL:0240-23-5275
営業時間:9:00~18:00
定休日:日曜
HP:https://www.miyata-unyu.co.jp/offices/fukushima.php
※所属や内容は取材当時のものです。最新の求人情報は公式ホームページの採用情報をご確認いただくか、宮田運輸に直接お問合せ下さい。
文・写真:奥村サヤ
※本記事はふくしま12市町村移住ポータルサイト『未来ワークふくしま』からの転載です。