地方は行政との距離が近く、新規事業を見つけやすい

ーこの経営理念のもと、基幹事業のソーシャルゲームの品質保証やカスタマーサポート以外にも、地元求人情報サイト「BUNTAN」など、続々と新規事業を打ち出しておられます。新規事業のテーマはどうやって見つけていらっしゃるのでしょうか?

地域の課題を見つけるところからですね。地域の課題を見つける上で、行政との距離が近いって、非常に有利です。これ、例えば東京とかだと絶対こんな距離で付き合えないなと思います。一緒に事業企画するところから入ってもらえたり、事業をスタートさせるためのパートナーを紹介してもらったり、いろんな手厚いサポートを受けています。

ー行政と距離が近く、協力してもらえるのはSHIFT PLUSさんが目立つ存在だから、というのもあるのでは?プレイヤーがいないところに飛び込むリスクをとったからこそ受けられる恩恵とも言えるでしょうか。

はい。今でこそ、ITコンテンツ産業集積プランの企業誘致で14、5社が来ていますが、うちはほぼファーストペンギンで来たので、それだけ話題になりました。さらに、雇用も1年で50名、2年で100名に増やせたので、その実績が県の中でも認められるようになって。

そうではなくても、地方ではちょっとでも新しいことや大きく人を集めるようなことをすると目立ちやすいと思います。今年4月に、入居したビルの1階をbridge+と名付け、オフィス兼イベントスペースとして解放したんですが、すごい反響がありました。ほかにも、「行政と連携して新規事業を始めます」とリリースを出した時のメディアの反応が思った以上によかったりとか。比較対象が適切かどうかわからないですが、東京でそれをやっても普通のことが、地方だからこそ、ちょっとでも飛び抜けたことをやると圧倒的に目立ちやすい。結果として、採用においていいインパクトになったり、地元をマーケットにしている地元求人サイト「BUNTAN」で営業的にもいい効果につながったりしている。これも、地方に飛び込んだからこそ受けられる恩恵ですね。

bridge+で開催されたイベントの様子

ー着々と理念をかたちにしていかれているように見受けられますが、今後の事業展開においてチャレンジングだと感じている部分はありますか?

やっぱり人材ですね。もちろん、高知にも、全国どこにでも、夢と情熱があって優秀な人はいます。いるんですけど、現状、そういう人は都市部に出ちゃっているんですね。だから、なかなか県内の採用マーケットだけ見ていると、どうしても会社をスピード感もって成長させていくのに十分な人材を確保するのは現状ではちょっと難しいかなと思ってます。もちろん、全くいないわけではないですが。なので、県外から人材を、具体的にはハイエンドのエンジニアやビジネスをつくって推進できる人材を引っ張ってくることが、短期的には必要かなと。

ーかといって、先ほどのお話からすると、都市部の価値観をそのまま持ち込みたいというわけではなさそうですね。最後に、松島さんが理想とするローカルベンチャーのあり方をお聞かせください。

高知の人たちが持っている仲間感というか、ウェットな部分は非常に優れているなと思っています。東京は、よくも悪くもドライ。合理性を徹底的に追求するからこそスピード感が生まれるわけですけど。 仲間意識が強くてフォローし合う、いい意味でのウェットさをうまくマネジメントできれば、ビジネスにとってもプラスの要素になると思っています。すごい抽象的な話になっちゃいますが、合理性とウェット感のほど良い融合によって、長期的成長を目指す上で最も良い状態が作れると思っています。

具体的なイメージでいくと、人材の比率を意識することかなと思います。高知だけの人材でもいけないし、都市部だけの人材でもいけないし、もっと言えば日本だけでもいけないですよね、もう。最近、海外出身者が増えてきていて嬉しいんです。多様な暮らし方、働き方を社会に提供するという理念のもと、それを生み出す企業としていろんな価値観を持った人を仲間にしていきたいなと思っています。


行政のパブリックマネー、東京の上場企業の資金を味方につけ、ポスト平成社会に適した生き方働き方のモデルを提示しようと奮闘するローカルベンチャーSHIFT PLUS。そのSHIFT PLUSに多くの若者が集っている現実は、非常に示唆に富むものだと感じました。

●株式会社SHIFT PLUS 概要

取材・文:浅倉彩