スタートアップの3年は体力強化。そして本分の「地域づくり」へ

100%民間資本で立ち上げたプロモうるま。

「設立時には補助金など一切受けずにスタートしましたので、当初は何を置いてもまず会社としての基礎体力をつけるところから始める必要がありました」

中村さんらは最初の3年間をスタートアップ期間と位置づけ、地域づくりを担っていく上での土台となる地域住民や行政との関係構築も図るべく、まずは市の委託事業を積極的にチャレンジしていった。

プロモーションうるま代表 中村薫さん

初年度は島しょ地域活性化事業、雇用促進コーディネート事業、市の産業振興施設である「いちゅい具志川じんぶん館」の指定管理業務などを受託。その後は就職支援センターの運営と職業紹介業も経験し、2017年には市の健康福祉センター「うるみん」の指定管理も受託。そして初年度から3年かけて形にしてきたプロモうるま史上最大級のプロジェクト、うるま市農水産業振興戦略拠点施設「うるマルシェ」の企画運営も、2018年秋頃のグランドオープンに向けていよいよ天王山にさしかかりつつある。

「うるみん」「うるマルシェ」については後編にゆずるとして、ここからは「ローカルイノベーション」を本分とするプロモうるまの“根っこ”であり“核”でもある「移住定住促進事業」への取り組みについて触れていく。

離島地域でのイベント開催は、課題解決の特効薬になるか?

仲宗根多恵美さんは、協議会発足時からのメンバーのひとり。移住定住促進事業を担当する事業開発部のプロジェクトマネージャーを務めている。

仲宗根多恵美さん

「プロモうるまで移住定住促進に絞った取り組みをスタートしたのは、実は今年(2017年度)が1年目なんです」と話すが、前身の協議会で3年、またプロモうるま設立からの2年、計5年間にわたって離島地域の方々と関わり、数々の経験を重ねてきた人物だ。

「最初の年、2012年はうるま市の伊計島で、廃校を舞台にした芸術イベント『イチハナリ(※注2)アートプロジェクト』が始まった年でした。(プロモうるまの前身である)協議会としてお手伝いをする中で、私たちも『観光と物産を通した雇用創造の実現』という目標に向け、“アート”に絡んだ切り口から地域を元気にしていけないか、と考えました」

そうしてスタートしたのが「暮らしにアートin伊計島」というイベントだ。「イチハナリ〜」が芸術鑑賞イベントなのに対して、「暮らしにアート」ではクラフト、つまり生活の中に取り入れられる工芸品を県内から集めて販売する、という自分たちのアイディアを取り入れた。イベント開催自体が地域を元気にするのではないか、地域の人に関わってもらえば一体感をつくっていけるのではないか、そう考えて夢中でイベントを形にしたという仲宗根さん。

「ただ、当時はイベント開催だけで精いっぱいでしたね。『これがどう地域活性化につながるんだろう』と、手探りで模索している状態でした」

浜比嘉島、伊計島の集落を舞台に開催された「暮らしにアートin伊計島 島のクラフトピクニック」

2年目には離島地域の全自治会が参加して物産販売を行う「あやはしフェア」を同時開催し、地域の大きな団体との連携も経験した。しかし「深いつながりとまでは至らず、人脈形成になった程度」だったと仲宗根さんは振り返る。

イベント内容が充実し、来場者数も増えてきた3年目になっても、地域の自治会との間の距離はなかなか縮まらなかった。現場でいろいろな協力は得られても、「全面的に自治会が協力していると思わないでほしい」と言われてしまう。

「私たちからの伝え方の至らなさもあったと思うんですが、3年経っても気持ちの疎通ができず、『自分たちがやっていることは、本当に地域のためになっているのかな』と悩みました

※注2:イチハナリ…伊計島の別名。橋で渡れるうるま市の離島の中で「イチ(一番)ハナリ(離れている)」ため、こう呼ばれるようになったという